次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
 パリッとした紺色のスーツに身を包んだ、目を瞠るほどの美しい女性が微笑みながら挨拶をする。
 声も良ければ、スタイルも良く、髪から爪の先まで綺麗に手入れされていた。
 自分と同じぐらいの年に見えるのに、若くして企画推進室とはかなりのエリートだ。もしかしたら、ホテル全体を統括する本社からやってきたのかもしれない。

 広瀬グループの下に五つのホテルがぶら下がっており、ロイヤル・ローズ東京もそのひとつ。達成さんも厳密にいえば大元のグループから来た人だ。
 もし彼女もそうなのだとしたら、達成さんとは面識があるのかも……と思っていると、彼女と目が合った。

「それと私、広瀬様のフィアンセです」

 彼女の一言で、カンファレンスルームに衝撃が走る。

 ある者は私を見て、ある者は達成さんと紫苑寺さんを見る。
 私は一応、達成さんの恋人になっているのだ。それに、いずれはフィアンセに、という彼からのとんでも発言もあった。
 一体、どういうことだとみんなが交互に私たちに視線を向ける。
 その様子を見て、彼女は花がほころぶような品のある笑みを浮かべた。

「いろんなお噂があるようですが、私が広瀬様のご家族にも認められた本当のフィアンセです」
「紫苑寺! 僕はそんなこと知らな、」
「あら、御爺様からお話を伺っていなくって?」

 もう挨拶も済ませましたのに、という言葉で達成さんの顔が苦虫を噛み潰したような表情になる。
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