愛とプライドとバベルの塔
「離婚してください。」
雪が降り積もる寒い北海道の二月の初め。
もうすぐ三年経とうする結婚生活に終止符を打とうと決意したわたし、瀬藤栞菜、いや、小田桐栞菜はそう言った。
「はぁ?!何言ってんだよ!俺を見捨てるのかよ!」
「先にわたしを見捨ててたのは、あなたの方でしょ?」
"離婚"という言葉に駄々をこねる、もう夫とも思いたくない目の前で煙草をふかす瀬藤文哉。
文哉は交際していた頃から借金まみれで、給料を全て使い果たしてしまう程ギャンブル好きで、どうしようもない男だった。
しかし、そんな彼にも良いところはあって、仕事に対して一生懸命で浮気はしない。
仕事に対してサボり癖があり浮気三昧だった父親のせいで母親が苦労してきたのを見てきたわたしは"仕事には一生懸命"なところと"浮気癖はない"という文哉に惹かれ、付き合ってはみたものの、蓋を開けてみればこの状態。
最初は、わたしも正社員で働いていた為、一緒に借金を返していばいいと思い、何社からも借りてる中の内の一社だけはわたしの貯金から一括で完済した。
「これからは俺が稼いで頑張るから!」
わたしは文哉のその言葉を信じ、わたしたちは結婚して正社員から文哉の扶養に入り、パートタイムで働き始めた。
それから少しでも借金を減らしていこうと決意をしたはずなのに、必死なのはわたしだけだった。
文哉は相変わらず何も変わらず、給料を全てギャンブルに使い、パートタイムで少ないわたしの給料だけで赤字生活を送った月も度々あった。
そのことについて話し合おうとすると、文哉はいつも逃げるように寝室にこもり、話し合いになどならない。
そして"離婚"の引き金となったのは、文哉のある一言だった。
文哉は休み、わたしは仕事で、帰宅後にご飯支度をし、「ご飯だよ。」と冷蔵庫の余り物で肉野菜炒めと味噌汁と白米を出した時、文哉はその料理を見てこう言った。
「はぁ?何これ。俺、野菜好きじゃないし食いたくない。」
その言葉でずっと我慢してきたわたしの張り詰めていた心の糸がプチンと音を立てて弾けたのだ。