家庭の違いと愛
両親から深い愛情を受けて育った人もいれば、 
そうでない人もいる。
世の中には様々な家庭がある。

私はどちらに属するのだろうか。

一見、幸せな家庭に見えるけれど、
心の奥底では何かが欠けている気がする。

子供の頃から高校生になった今に至るまで
誕生日はいつも父と母と家族3人でお祝いをしてもらっているし、年に数回は家族でイベントにも行く。

父には叱られたこともないし、
母とも稀に小さな喧嘩こそするけど世間で言うような
いわゆる反抗期のような大きな喧嘩とかは一切したことない。

「死ね!」とか「ババア!」なんて
そんな反抗期特有の常套句も口が裂けても言えないし、わざわざ親を傷付けるようなこと言う気も起きない。

物心ついてから、何不自由なく過ごしてきた。
それでも、心のどこかにぽっかりと穴が空いているような、満たされない感情がある。

もしかしたら私は冷めているのかもしれない。

学校でも周りの女の子たちは恋愛トークに夢中になり
あのクラスの男子が〇〇と付き合ってるだの
ホテルに行ったとか行ってないとか。

男子は男子でSNSで聞き齧ったような知識で
LINEを送ってくる。
私はモテる方ではないような気がするけど
モテない方でも無いのかもしれない。

毎日誰々に告白されただの話してるカースト上位の子達とは住む世界が違うけど、
きっと人並みに恋愛を出来る土壌も整っているんだと思う。

でも満たされない心の原因を探ると
最後はいつもこの育った環境にある気がする。

そしてそんな感情を持つのは今が始まりではない。

小学校低学年の頃、
クラスメイト数人とその親たちと一緒に、
休みの日にハイキングに出かけたことがある。
詳細な名前は思い出せないが、
その時の出来事は今でも鮮明に覚えている。

その帰りにある1人が冗談で近くの子を車道側に追いやり道路にはみ出させようとした。
私は友達と話しながらも内心チキンな心でドキドキしたのを覚えている。

その時にお母さん達は慌ててそのイタズラっ子を止めて
追いやられた子を歩道側に引き戻した。

その時にイタズラっ子は悪びれる様子も無く
ニヤニヤしていたものの、恐らくお母さんであろう
30代〜40代の女性に一喝され
周りも引くほどの怒声で叱られ、あっさり泣いた。

流石に叩く蹴るみたいな躾はしていなかったが
そういうことも辞さないような躾のいかにも厳しそうな
叱りっぷりに私は驚いた。

そんな時に周りのお母さん方は自分の子に
あんたはやったらダメだよ?とか、
なんで止めないの!
と巻き添えで叱られていたが
私の母はというと、
その状況にオロオロして冷や汗をかくばかり。
〇〇君大丈夫だった?とか、怖かったね。
とか言うだけで私に対して注意もしなければ
他のお母さん達のようにそれに対する何のアクションもしなかった。

いや

できなかったんだと思う。

子供ながらにそう感じた。

私は強く叱られた経験も無ければ
叩かれたり蹴られた経験も無い。

反抗期みたいなのが無い理由も多分それが理由だと思う。
だって叱れないお母さんに対して
悪口や暴言を吐くのはイジメと同じだと思うから。

年相応に不満を感じる瞬間はあるけど
きっと何も言い返さずあの日のようにオロオロするだけの母を想像すると私の胸が痛くなる未来しか見えなくて
とても反発する気が起きなかった。

でも何不自由なく暮らして来た中で
ずっと胸につっかえていた感情というのも
恐らくはこのハイキングの一件から今に繋がっている気がした。

私は怒鳴られて泣いている男子を見た時も
たまにスーパーなどで欲しい物が買ってもらえず叱られて泣いている子供を見る時も
心のどこかで羨ましさに近い何かを感じていた。

絶対に不謹慎だから表立っては言えないけど
よく芸能人なんかが子供の頃に自分が悪さをした時は父親に殴る蹴るでめちゃくちゃにやられてました。
なんて話をする時は、

私の両親はゾッとした顔で引いていたが
自分はというと少し羨ましさを感じていた。

それがマゾなのかもと思って悩んだこともあるけれど、
色々調べてそれも違うと分かった。

私は、両親と心の底から向き合ったことがない。
それに気づいたとき、
胸の奥に冷たい風が吹き抜けたような感覚を覚えた。

心と心のぶつかり合いをしたことがないから
自分の本心を全て吐き散らした事もないし
母と父の心の内を知った事もない。

だから何となく平穏に暮らしているけれど
薄い1枚の壁が双方の停止線のように距離を取っていて
そこ先には進入できない。

それに比べて思い切り怒鳴られ泣かされ
叩かれ大騒ぎするような家はいいなと。

きっと叱る側も思いの丈を全てぶつけるだろうし
泣かされる側も思いの全てを謝罪という形で表現するだろう。
その先には先々へと繋がる信頼関係や愛情も生まれるんだと私は思う。

叩く教育が悪とされる今の世間的にはズレた考えだと思うけど。

そんな風に毎日悶々と過ごし
学校の授業も何となく聞いて家に帰って部屋に入ると後はご飯の時間以外は部屋から出ない。
そんな生活の中で私のこの感情を悪い意味で刺激する人たちがいた。

正確には昨年引っ越して来た。
その人たち、いや家族は。

私が昨年中3で高校受験に備えて勉強している時から
この家族には頭を悩ませていた。

一応挨拶にも来ていて私も何となく顔は合わせたが
中身の無い会話しかしていない。
見ている限り母親、父親、娘、歳の離れた弟の4人家族だと思う。

最初に感じた事はこの父親の頼りなさだった。

何というか世渡り上手な感じはしないでもないが
ウチの父親を見ているようないつもニコニコして
ふんやりした印象だがきっとこの奥さんに全て主導権を握られているだろうなと直感するようなパワーバランスを感じた。

旦那さんは50代に差し掛かるくらいで
対照的に奥さんは30代後半くらい。
年齢的には旦那さんが明らかに上と見れるが
態度や雰囲気では奥さんが圧倒していた。

単純に奥さんの方が身長も高く170近くはありそうで
体格も良い。
細身で引き締まってるというよりも
普段から鍛えられているんですね。と褒める方がきっと彼女は喜ぶと思う。

軽装にサンダルで挨拶に来たせいもあるが
腕の太さや脚の筋肉からして
普段から鍛えているだろうしなんかストイックそうだなと。
黒髪をポニーテールにまとめる姿はアスリートのようだった。

もっと言うと隣に立つ旦那さんがザ・中年太りみたいな体格なのも余計にそう見させたのかも。

話は逸れたがウチに挨拶に来て
最初に色々喋った後に隣にちょこんと立っている娘に対し

「くるみ!ご挨拶は?」

「あっ、高崎くるみです!」

「何歳、何年生まで言う!お母さん言ったでしょ?」

「4年生です!古宮小学校に通っています!」

と、もうこのやり取りだけで

(あー、ウチと真逆だ)と感じた。

奥さんの声も甲高い声だから余計に威圧感というか
教育ママ感を感じた。

そのやり取りをどこか居心地悪そうに
苦笑いで見つめる旦那さんと、
それに共鳴するように苦笑いを浮かべる
私の両親を見てもう既に人の性質の違いがハッキリと浮き彫りになっていた。

その弟くんはまだ幼稚園とのことだったが、
同じように自己紹介をされされ
何とも気まずい空気を感じる一幕だった。

この高崎家というのが厄介だった。

奥さんとウチの母は仲良くなり
今では奥さん呼びから桃子ちゃん呼びに変わりたまにお茶をしているみたいだ。

(その歳で桃子ちゃんは無いでしょ。若く見ても38-39だろうし)
と心中毒付いたが私もその年齢になったら
同じことをしているかもしれない。
不用意なディスはやめておく。

桃子さんと娘のくるみちゃん。
今は5年生になったが
この2人がとにかく私の今までの人生のモヤモヤの全てを攻撃してくるような存在なのだ。

始まりは昨年、私が受験勉強をしている時だった。

高校なんてそこまで拘りのない私でも
流石に中学3年生で全く勉強をせずに構えていられるほどの心は持ち合わせていない。

両親も使ってくれて家は平穏に包まれ
私の勉強態勢のバックアップに尽くしてくれた。

そんな中で高崎家の特徴のようなものが
片鱗を表し始めた。

まずこの家、ある程度想像はしていたが
父親の影が薄く生きているのかどうなのかすら怪しい。
恐らく朝ひっそりと出勤し夜には帰って来ているのだろうが何というか家族で出かける感じもなく
ひたすら地味なのである。

対照的に桃子さんはというと
まぁ言ってしまえば私についてこいのリーダータイプ。
恐らく私が中3とくるみちゃんより歳上だからあまりタッチしてこないが、これが歳が近ければけっこう色々言ってくるタイプだと思う。

常識は持ち合わせているけど距離感が近いというか
自分の思った事はズバズバ言う人。

ウチは引っ越してきて数ヶ月の隣人に完全に制圧されてしまった。
その母も押しに弱いのか単純に気が合うのか知らないがあの調子で仲良くしているのだから話にならない。

この力関係が後々尾を引くことになる。

私が受験勉強に精を出すのは基本的に夕方以降。
学校から帰宅して塾に通って帰宅してまた勉強。

そこで私のストレスになったことが
桃子さんの躾である。

想像通りだがとにかくこのお母さん、気が強い。

ウチの両親に慣れていた私には色々とショックが大きいくらいに。

高崎家は配置的には私の家の真後ろに建っているが
私の部屋の位置からは丁度くるみちゃんの部屋が見える。

お互い2階だから目を合わせようとすれば
それも出来る位置関係だった。

私の部屋からは高崎家の1階のリビングも見えるため
度々目にすることになるのだが

このお母さん、というか桃子さん
今の時代を逆行するような体罰肯定派かつ叱る時は
ガツンと雷を落とすという大正からの転生してきたような性格なのだ。

窓も流石に全開ではなさそうだが
網戸なのかいつも音が漏れてくる。

それがまあやかましい。

くるみちゃんもあの桃子さんの鬼母ぶりには
慄いているようだがやはり小学4年生、所詮は子供。
度々何かしらで叱られている。

私が勉強に集中していると
隣の家から聞こえてくるのは

「くるみ!何なのこれ!こんな床びちゃびちゃにして!お水あるところで颯太を遊ばせないって言ったでしょ!」

ほら始まったよ。

人が勉強してるんだから静かにしてよ。
私も窓を閉めるが一度聞こえてくると私も気になってしまう。

さっきも言ったようにこういう全開の感情で叱る、叱られる親子関係は心のどこかで羨ましさも感じていたから。

窓を閉めればいいものの、
私もなぜか気になって開けたまま流石に覗き込んだりはしないが声だけでその行方を追いかけてしまう。

一応隣の家だし向こうも窓が全開の訳ではないから、
くるみちゃんの声が小さいのは仕方ない。

でも叱られているのは確かだ。

そしてこの辺りで何かしらの罰が加えられるのが
いつものオチ。
体罰肯定派とあって何かしらはしているんだろう。

何回か思わず覗き込んだことがあるが
私が見た時はゲンコツ・押入れに閉じ込める・部屋のお庭に出して閉め出される。と言ったところ。

どれも私の人生では一度も体験したことがない躾である。
その時点でくるみちゃんは私より人生経験が豊富と言っていい。

くるみちゃんはと言うと、
ゲンコツの時はゴツンとやられて痛そうにうずくまり、
その状態で桃子さんのお説教が続くパターンと
思わず泣いてしまうパターン。

外に閉め出されたり押入れパターンはここまで聞こえるくらい大泣きしている。

なので私も流石にこの大泣きは気が散るから
勘弁してほしい。
でも仲良くなったも所詮は桃子さんの方がウチの母より立場が上なのだ。

別に向こうもそんな気は無いだろうけど
ウチの母の気弱な性格では何も言えない。

相変わらずあらあらと眺めているだけ。

躾に相当厳しいと見える桃子さんだけに
こんなのは本当に日常茶飯事だった。

それでも私は何とか志望校の高校に合格し
今こうして高校生活の最中。

桃子さんや旦那さんからもお祝いの言葉も貰い
一応その場は軽く流したが私は色んな意味で複雑な境地だった。

そして今日、ついさっきまた事件は起きた。

私は高校から帰り部屋に入る。

いつものルーティンのようにお風呂を済ませ
食事も済ませると部屋に戻る。
一応周りと距離を置かれない程度にクラスのメンバーとのLINEを返しつつ、時間を潰していた。

時間は20:00を回っていた。

そんな中でまたあの聞き慣れた声が私の部屋にまで
突き刺さる。

「くるみ!ちょっと来なさい!」

「嫌だぁ!ごめんなさい!」

「あんたって子は!絶対許さないからね!」

「ごめんなさい!待って、お母さん!」

まーた始まった。

もう私も慣れたがどうせ今日も桃子さんの怒声からお説教、最後はゲンコツでフィニッシュかな。

しかしあのゲンコツ痛そうなんだよな。

相手は小学5年生とはいえ女の子。
特に身体付きも大きくない。
むしろ父親譲りなのか小柄な華奢な体型である。

そんな子に桃子さんはいつも容赦無く
力強くゲンコツを落とす。
音は流石に聞こえないが「ゴツン!」と一瞬聞こえそうなほど。

多分あれを食らったら高校生の私でも半泣きになるか
下手したら痛みで数分グロッキーになると思う。

それを小学生に、、

きっとそのパターンかと思いながら
相変わらず私は自分から貰えなかったこの躾という名の体罰で表す愛情表現に飢えており
申し訳ないと思いながらも
時間が許す今は少し見てみようと思った。

いつもは声だけ聞いていたが
そのトーンだけで今回は少し事が重そうに感じる。

まず普段のようにその場で怒声→罰ではないのだ。

多分1階から連行されてきたのだろうが
くるみちゃんはパジャマのようでTシャツに短パンといった、まあいわゆる部屋着だ。

桃子さんはというと少し遅めの帰宅だったのか
黒のノースリーブにロングスカートのコーデ。
相変わらず逞しい太い腕が露出していた。

2階で叱られる声はもちろん何度も聞いたことがあるが
今日は相当桃子さんも怒っている。

まあ差し詰めくるみちゃんが留守番中に何かやらかしたとか、弟くんのことで言いつけを守らなかった。
とかだろう。


私はカーテン越しにその2階のくるみちゃんの部屋の様子を眺め続けた。

今回はあえて私もバレないように窓自体を少し開けて
いつもより聞こえやすい状況を作っていた。

桃子さんの怒りは止まらない。

全ての声は聞き取れなかったが
どうやらお留守番中に弟くんの面倒を見ているはずが
くるみちゃんも少しだけ遊びに出掛けてしまったらしい。
それがこの時間になりバレてしまったらしい。

兄妹のいない私には分からないが
きっと大変なことなんだろう。

桃子さんの怒声はいつにも増して激しく
くるみちゃんはお説教の段階で半べそを超えて涙を流すまでになるほどだった。

くるみちゃんに対し数分間叱責を続け
桃子さんのいつもの流れだと恐らく押入れに閉じ込めだろうな。
そう思った。

そうすると桃子さんはくるみちゃんの前に仁王立ちし、
頭目掛けてゲンコツを一度ゴツンと落とした。
いつもより痛くしたのだろう、苦痛でしゃがみ込むくるみちゃん。

うわあ、今日はまたいつにも増して痛そう、、、

くるみちゃんの泣き声もこちらに聞こえてくる頃に
桃子さんはしゃがみ込み頭を抑えて泣いている
くるみちゃんの前まで移動すると

そのままくるみちゃんのお腹の辺りを少し浮かせるように片手で持ち上げ、
そのスペースに自分の正座した脚を入れ、
身体を前に押し倒した。

私にはこれが何の儀式かすら分からなかった。


体勢的にはしゃがみ込むくるみちゃんは正座した
桃子さんの膝の上に乗せられた形になる。

私の部屋の角度からはくるみちゃんの頭が向こう向きで
こちら側に足の裏が向いており
ちょうど正座する桃子さんの横顔が見えるような状態だった。

そうすると桃子さんは泣いている娘を気にもしない様子でそのパジャマのズボンと中に履いているパンツに指を掛け一気に膝の上辺りまでズリ下ろした。

私は絶句した。
何となくの知識だがこれは多分そのアニメとかで見るようなお仕置きだろう。
もしそれが正解なら。

まあ確かに子供の躾かもしれないが、
くるみちゃんは小学5年生。
ゲンコツや締め出しはともかく、
こんな躾をされる年齢とは思えないし
第一恥ずかしいだけでこんなの効き目ないでしょ。
と、私は率直にそう思った。

大体ゲンコツだって桃子さんのこの太い腕力あってこそ、普通なら、、、

、、ん?

桃子さんの太い腕。
恐らく相当の腕力。

だからこそゲンコツでくるみちゃんは泣かされる。

ならばもしかしてこれも侮れないのだろうか。

当の本人はもう泣いているようで顔は見えないが
ひたすらに
「嫌だ!ごめんなさい!」と泣きながら懇願している。

そんなに嫌なものなのか。

私ならもちろん嫌だ。
躾で愛は感じたいと思っていたが流石にお尻を丸出しにされるのはちょっと。
まあ仮にアニメとかでよくある躾だったとしても
きっとこの恥ずかしいポーズにすることが目的で
痛みとかの話ではないだろう。

でも恥ずかしいだけでも嫌だから
私は5年生という中学生も意識する年齢で
母親の膝の上でお尻を丸出しにされるくるみちゃんに心底同情した。


まあ普段とは異色の躾。
辱めるための罰?なんだろうが、
それならゲンコツと締め出しとかの方が効き目がありそうに思う。
私に覗かれてはいるが向こうは部屋に2人きり。
恥ずかしいと言ってもお尻を母親に見せているだけで
普段の罰に比べたらまあ痛みとかで言えば相当楽だろう。

きっとこの恥ずかしいポーズで幼稚園児のように
少し躾をして終わりなんだろうから。

だが徐々にそこに疑念が生まれる。
くるみちゃんの慌てふためきと泣き声がどんどん大きくなるのだ。
そして桃子さんの怒りのボルテージも。

「もうしません!もうしませんからぁ!お母さぁん!」

「くるみ、許さないってお母さん言ったら絶対絶対許さないからね。危ないことしたんだから今日は何があっても終わらないよ!」

「いやだよぉぉ!」

なになに、そんな大事なのか。
これ幼少時の躾でしょ。

どうせ数発ペチペチするだけなんだから
さっさと終わらせてあげたらいいのに。

それとも本当にここまで恐怖に震えるほどの躾の体罰が始まるんだろうか。

桃子さんの怒声が響き渡り、
くるみちゃんが本格的に泣き始める。

無意識なのか足をパタパタと動かしているようだ。
私からはくるみちゃんの足の裏の動きで判断が付く。

そして少しの間を置き

桃子さんはその長く太い太い右腕を大きく振り上げた。

振り上げたというよりも振りかぶったに近い。

一気に勢いを付けてくるみちゃんのお尻の割れ目の辺りを狙って、それは着弾した。

バシィィィィン!

思わず私がビクッとしてしまった。

これはお尻叩く音とは思えない。
もはや何かの爆発する音のよう。

叩かれた瞬間にくるみちゃんは両足をビクンと跳ね上げ
桃子さんの膝の上で暴れ出す。

もしかすると今から私はとんでもない体罰を目にするのだろうか。
お尻だからとか子供向けだからと舐めていた。
多分この1発だけで高校生の私でも下手したら泣いている。

されたことなんて一度も無いが分かる。

もはやこれは怪我の領域だ。

その証拠にくるみちゃんのお尻の割れ目には
桃子さんの大きな手形がクッキリと浮かんでいた。

「いたぁいっ!」

声が漏れ足が跳ね上がるくるみちゃんの体制を軽く整え、桃子さんは再びその鍛え上げられた右腕を大きく振り上げる。

バシィィィィン!

「いった!」

またくるみちゃんの足がバタバタとこちら向きに暴れて見える。

「くるみ!1発2発でジタバタすんじゃないの!」

既に2発で割れ目に赤みを残すくるみちゃんのお尻だが
桃子さんは怒声をあげるのみ。

くるみちゃんの足が元の位置に戻るのを見ると

バシィィィィン!

「あぁゔっ!」

最初の数発はお尻の割れ目に、
その後はお尻の左右を交互にと
桃子さんなりに順番付けているようで
しっかりとお尻の全体を満遍なく叩いていく。

30発を超える頃にはすでにくるみちゃんのお尻は
赤く変色しており、ここからでは見えないが
腫れているようにも少し見えた。

ようやく終わりなのだろう。

1発ごとに足が跳ね上がったり、海老反りのように
身体が跳ね上がる。
その動きから桃子さんのお仕置きの強烈さが窺える。

くるみちゃんはもう大泣きで反射的に暴れる足を
元に戻すのがやっと。
きっとここで逃げだり暴れたらもっとキツくお仕置きさらる未来が待っていることは、
くるみちゃん自身が身に染みて分かっているのだろう。

30発はまあ子供でもきっと多い。
でもそれ以上に恐怖を感じたのは桃子さんのお仕置きのはその威力。

あの鍛え上げられた太い腕はこのためかと思うほど。

私も本当に同情するほど可哀想になったが
桃子さんの手も止まった今、後はようやく許してもらえるのだろう。

ホッとしたその時だった。

桃子さんはため息をついたのか
呆れた顔を見せると膝に乗せたくるみちゃんを持ち上げ
そのまま抱き抱えたまま
くるみちゃんのベッドにどさっと座った。

そして体制をそのままにくるみちゃんを膝の上に乗せ直し、そこから左足の膝の上に乗せ直す。
そして桃子さんは右足を抜き出しそれをくるみちゃんの足に挟み込み、
左足と右足で完全にロックするポーズを作った。

戦慄し号泣すらくるみちゃん

「おかぁさぁぁん!お尻いたぃぃ!もうしないからぁ!」

「ジタバタして全然反省してないみたいだからね」

「してるってぇ!」

「さっ」

そう言うと再び桃子さんはその右手をくるみちゃんの赤くなったお尻に置く。

私はもうこれはきっととんでもなく厳しい母親と
哀れな娘さんなんだ。
もうそうとしか思えない。
でもこういう手を上げる躾を求めていた自分には
この光景を見ないわけにはいかなかった。

気付けば釘付けになる私がいた。

さっ、と一言吐いた桃子さんは言葉を続ける

「もうお尻逃げられないからね。さっきも言ったけど今日は許しません。お尻100叩きしますからね。暴れないように抑えてるけどこれでも暴れるなら200でも300でも叩くからね。」

泣きじゃくるだけのくるみちゃん。

それはそうだろう
30発で赤くなったお尻をこれから最低100は叩くと宣言なんてもう泣くしかないよね。辛いと思う。

そして泣いてる姿をよそに桃子さんは両足で挟んだ
くるみちゃんのお尻を完全に抱え込むように抑える。

もう逃げ場が無い。

そして再びあの太い右腕が大きく振り上がる。
剃り残し一つない綺麗な脇がこちらに見えるが
そんなことを考えている場合ではない。

ここから悪夢が始まるのは目に見えていた。
 
バシィィィィン!バシィィィィン!
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バシィィィィン!バシィィィィン!
バシィィィィン!バシィィィィン!

一気に連打に入った桃子さん。

くるみちゃんはもう1発ごとに足を動かすことも許されず、完全に固定された状態のまま
もう言葉にならない言葉だけ必死に紡ぎ
桃子さんへ謝罪を伝え続けた。

だが私からはその必死の号泣謝罪を受ける桃子さんの顔が見えるが、
この人は恐ろしい。

ひたすらくるみちゃんのお尻を見つめてお仕置きを続け、くるみちゃんの方を見向きもしない。
たまに顔の角度を変えたと思うと
時計の方を確認したり、部屋の壁の方をチラッと見たり。

叩いてる最中にくるみちゃんの方はほとんど見ないのだ。

手を振り上げながら突然手を下ろしたと思えば
ここからは見えないがくるみちゃんのお尻に恐らく
桃子さんのポニーテールに縛った髪が数本落ちたのだろう。
 
あれだけ腕を振り上げて物凄いスピードで下ろしてくれば頭も揺れるからそりゃ髪も抜けるのも分かる。

所作からして髪を手で拾うような動作を数回繰り返す桃子さん。

振り上げた突然腕を下ろし自分のお尻の髪の毛を拾われる、くるみちゃんの身になると不憫でならない。
きっとその手が振り下ろされると思い無駄に1発分力んでしまったのだろうと。

涼しい顔でお尻の髪の毛を拾いゴミ箱に捨てると
再び大きく振りかぶった右手がくるみちゃんのお尻に突き刺さる。

ここまでも大きく響き渡るお尻叩きの破裂音と、
泣き声。

結局完全にロックされ暴れることも物理的には可能になったくるみちゃんはお尻100叩きを受け切った。

時間では10分もかかっていないが
あれだけの威力だ。

お尻はもうここから見てもハッキリ分かるほどに腫れ上がり、くるみちゃんは大泣きに大泣きという感じ。

桃子さんはお尻を少し撫でると膝から下ろし
1階へと降りて行った。

真っ赤に腫れ上がったお尻を曝け出し、
本来ならすぐにパンツを上げたいだろうが
1人の部屋で誰にも見られる心配の無いくるみちゃんが
あのいかにも痛みでおかしくなっていそうなお尻をすぐにパンツに仕舞うはずない。

丸出しで腫れ上がったお尻を出したまま
何分も何十分も泣き続け、
時には「お尻いたいよぉぉ!」と泣き叫ぶ声も聞こえ
私は今はもう見てはいけないとようやく気付き
カーテンと窓を完全に閉めた。

閉める直前に、

「くるみ!いつまでもメソメソしてないの!近所迷惑なんだからね!」

いや、あんただろ。
と私は内心毒付いた、

悪さの大元は娘でも近所迷惑の原因はあんただよ。

でも、これだけ酷い躾を見ても
ウチの両親のように心をぶつけられない親子の関係なら、向こうのほうがいいのではと。

絶対にされたくはないが
これを見てもなおどこかで羨ましさも感じる
そんな1日だった。
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