狼達は円かな月を守りたい。〜狼達は月に集う〜
総長様にお目通り
「まあ、部屋がないんだからしょうがないな。秋奈。寮に案内する。そのついでに龍牙も紹介するな。まあ、悪いやつじゃないんだが、いかんせん愛想というものがなくてな。」うう、女の人が近づいただけで退学にした東雲様、、、、、私も退学にさせられたら奥様に迷惑かけてしまう、、、そんなことを考えながら重い足取りで案内されるまま氷牙様についていく。沈んだ気持ちで歩いていると雷ちゃんが、「てか秋奈まだ僕達以外様付けする癖治ってないの?」と聞いてきた。「う、うん。」そう、私は雷ちゃんと風ちゃん以外の人をすべて様付けにしている。なぜかと言うと、自分より年下の方でもしっかりと敬うように奥様に言われたから。「気を抜くと様をつけないで呼んでしまうような気がして、、、、、、」と私が言うと、うつむいていた雷ちゃんが突然言葉を発する。「ねぇ。秋奈って今幸せ?香里奈たちの使用人だけど。」、、、なんでそんな事聞くんだろう?香里奈とはお嬢様のお名前で、私がメインで仕えさせていただいているご主人様である。「うん。幸せだよ?なんでそんな事聞くの?」そう言うと、雷ちゃんは少し考えこんだあと、「秋奈は悔しくないの?家を奪われて臣籍降下だよ?」ああ、そういうことか。「悔しくないよ。臣籍降下も私が望んだこと。奥様も私の意見を尊重してくれて、なんにも言わなかった。」それに、、、、と私は続ける。「あの事があったから本家いるのは怖いっていう、私の我儘。」そして、数秒間の沈黙。「そっか。秋奈が幸せならいいよ。」と雷ちゃんは言った。でも、と雷ちゃんは続ける。「もし秋奈が辛いなら僕達の力をすべて使っておばさんたちを失脚させるからね!」ふふ。雷ちゃん、、冗談でも、嬉しいなぁ。「ありがとう雷ちゃん!大好きだよ!」心配してくれたことが嬉しくて、子供の頃みたいに大好きって言った。すると顔を真っ赤にして、「も、もう!やめてってば!」といった。そんな事を雷ちゃんと話している間に、寮についていたらしい。「ここが生徒会寮だ。セキュリティはしっかりしているから、安心していい。」と、心做しかむすっとした氷牙様が、声をかけてくださる。「、、、お城ですか?」こんなにどこもかしこも大きいなんて聞いてない!「そうか?普通だろ。それに今から会う龍牙の家なんてこの学園くらいだぞ。流石にかなわんな。」そ、そんなに、、、もし怖い人で、いきなり死ねとか言われたらどうしようというか視界に入った瞬間殴りかかられたりなんてしたらど、どうしよう、、、。と、そんな事をぐるぐる考えているうちに部屋の前についていたみたいで、氷牙様が大きく扉をノックしていた。そうして少しすると、「、、、なんだ。」と一人の男の方が出てきた。この方が、、、東雲龍牙様。名前はリストに載っていて知っていたけれど、お顔を拝見したのは初めてだ。初めて、だよね?いきなりずきん、と頭痛が襲ってくる。いけない。と意識を目の前の龍牙様に向ける。髪の毛は少し長めの髪の毛はアッシュグリーンで、何もセットしていないように見えるがなんとも言えない凛々しさ、格好良さに満ちている。人を威圧するようなオーラに満ちている男の方。この人、、、強い。実践で訓練を積みまくっている私でも、敵わないくらい、、「龍牙。この子がお前の隣に越してくる秋奈だ。」、、、やっぱり相当女の人が嫌いみたい。物凄い殺気を放ってる。なので私はお嬢様に頼まれて男装したときによく使っていた、女の人の気配を消すように意識しながら手短に「突然押しかけてしまい申し訳ございません。東雲様に関するお話はお聞きしました。あまり関わらないようにいたします。よろしくおねがいしますね。」と挨拶をして、隣の部屋に引っ込もうとした。でも、はしっと腕を掴まれて、、、も、もしかして退学!?しっかり直ぐに離れようとしたのに!?「お前ならば、、、構わない。」え、、、?「これから、どうぞよろしく。」そう言ってふんわりと微笑む彼の姿は、、花が綻ぶ様に、美しかった。