隣の部署の佐藤さんには秘密がある
「佐藤さんに連絡するのはやめとこ……」

 会議中に表示されてしまったら恥ずかしいし、別れたのに関係が続いていると思われるのも良くない。佐藤さんと別れたことを知っているのはみゆきだけ。本城さんはまだ付き合っていると思っている。それに、前例ができてしまったため、最近はよく「佐藤に連絡してくれ」と言ってくる。最初は冗談ぽかったけど、最近は本気な感じがして厄介だ。

 それから数日経ったある日、ランチを終えた私は本屋に並ぶ雑誌に目が釘付けになった。それは隣にいたみゆきも同じだった。

「KOTA引退!?え、早くない!?最近出てきたばっかりなのに!」
「辞めちゃうんだね……」

 私とみゆきは雑誌を手に取った。

「こんなに売れてるのに、勿体ないなぁ。」
「……ね。」
「海外行くのかな~あとは結婚とか!?」

 雑誌を握っている手に力が入った。そうかもしれない。モデルの仕事を辞めて水伊勢家に戻り、しかるべき相手と結婚し、社長である兄と共に事業を引き継ぐのかもしれない。水伊勢家に戻るのなら復職することなく退職するだろう。会社を辞めてしまったら佐藤さんと会うことはなくなる。

「さき、どうしたの?そんなにKOTAのこと好きだったっけ?」
「あ、いや……なんか、こう……絶頂期に辞めるって感慨深いなぁと思ってさ……」
「何よそれ。年取ったんじゃない?そんなことで泣くなんて。」
「だね……年取ったわ。あはは。」

 私は涙の理由をなんとか誤魔化した。
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