隣の部署の佐藤さんには秘密がある

25.手紙

 次の日、出勤した私の前に現れたのは疲労感に陽気な笑顔を貼り付けた本城さんだった。

「宮島さん、昨日はありがとう!あなたのおかげで、昨日は早くあがれましたよ。ははは!」

 本城さんのテンションについて行けなくて聞き返せなかったが、どうしてそんなことを言われたのか、みゆきから聞くことになった。

「聞いたわよ〜佐藤さんに連絡したんだってね?」
「なんで知ってるの!?」

 未練がましくメッセージを送ってしまったことを、みゆきに知られているとは思わなかった。

「八代さんに聞いたのよ。」
「八代さん!?」
「聞いたっていうか、勝手に喋ってたんだけど。」

 八代さんは営業だ。私とは全く関わりがない。

「昨日、本城さんたち夜に会議してたんだって。佐藤さんもリモートで参加してたらしいんだけど、佐藤さんスマホだったみたいでさ、出ちゃったんだって。さきからのメッセージが。」
「はずっ!」

 付き合っていた頃の熱量の高い文章ではなかったことがせめてもの救いだ。

「それでね、佐藤さん、その後に出された仕事をぜーんぶ引き受けたんだって。」
「え?」

「本当にできるのかってみんな半信半疑だったらしいんだけど、その後2時間くらいで佐藤さんから完成品が送られてきたらしいの。それで、本城さんも昨日は早く帰れたって話。すごくない?愛の力としか思えないわ。」
「だから本城さん、あんなこと言ってたのか。」

「佐藤さんは失恋で休職していることが確定したわね。仕事できるってことは、体力よりも心の回復が必要なのよ。さき、これから毎日連絡しなさい。さきの力で、あの部署のピリピリが無くなるかもしれないんだから!」

 無理しないで欲しいが、本当に元気が出たのならそれは嬉しい。けれど、八代さんに知られているのは問題だ。きっとみゆきだけじゃなく、会社の全員が知っていることだろう。私は苦笑いするしかなかった。
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