隣の部署の佐藤さんには秘密がある
21.誘惑
「俺の本名は水伊勢晃太……水伊勢って知ってる?」
「もちろんです。」
知らない人はいないだろう。
「俺の兄は巷で話題の若手社長龍司、姉はモデル。父は会長、祖父が相談役。俺だけが水伊勢と関係ないところにいる、なんの取柄もない普通の会社員。だから名前を変えてる。」
取柄がないなんてことはない。佐藤さんにはとんでもない威力の武器がある。
「この前、磯山さんが迎えに来たのは、祖父が倒れたからなんだ。いつもはあんな風に突然迎えにくるなんてことない。俺の監視を頼まれてるみたいだから大体近くにいるらしいけどね。」
「今日も探していたんだと思います。朝から連絡が取れないって心配してましたから。」
運良く磯山さんに遭遇できてよかった。そうでなければ、佐藤さんはひとりで苦しんでいたかもしれない。
「そんなわけで俺の家は特殊なんだけど、これからも佐藤晃太として生きていくつもり。だから、これからも一緒にいてくれる?」
彼女なのにどうして教えてくれなかったんだなんて思ったこともあったけど、それも含めて佐藤さんだ。
「よろしくお願いします。」
「よかった。隠してることが多いから、また怪しまれると思った。」
本当に佐藤さんは秘密だらけだ。サンチェス=ドマーニ好きだし、カッコいいし、御曹司だし。それに、姉がAkane!
「それより、お姉さんがAkaneだって早く教えてくださいよ。クロードの撮影も一緒だったんですよね?」
「姉ちゃんのこと知ってるの?」
「私がサンチェス=ドマーニを好きになったきっかけはAkaneなんです。次はお姉さんの写真を送ってください。できたら10枚くらいお願いします。」
「俺は1枚なのに、どうして姉ちゃんは10枚なんだよ。」
「佐藤さんの写真は見るのが大変なんです。Akaneの写真は何枚あってもいいですから。」
「あーあ。なんか熱いかも。着替えよっかな~」
「スーツですもんね、着替えた方が良いと思います。出ますね。」
立ち上がると、佐藤さんに手を掴まれた。
「着替えるんですよね?」
「そうだよ。」
佐藤さんはネクタイを緩めた。
「待ってください!出ますから!」
「ここにいて?」
足元から悪寒が這い上がってきて鳥肌が立った。この雰囲気はまずい。
「ちょっ……離してください!」
「離すと思う?寝室に彼女がいるのに。」
佐藤さんはゆっくり前髪をかき上げた。目を逸らそうとしてもできない。頭の中がぼーっとしてきてしまう。このままじゃ──
「おいで?」
くいと手を引かれて、体がぐらりと佐藤さんの方へ傾いた。
「もちろんです。」
知らない人はいないだろう。
「俺の兄は巷で話題の若手社長龍司、姉はモデル。父は会長、祖父が相談役。俺だけが水伊勢と関係ないところにいる、なんの取柄もない普通の会社員。だから名前を変えてる。」
取柄がないなんてことはない。佐藤さんにはとんでもない威力の武器がある。
「この前、磯山さんが迎えに来たのは、祖父が倒れたからなんだ。いつもはあんな風に突然迎えにくるなんてことない。俺の監視を頼まれてるみたいだから大体近くにいるらしいけどね。」
「今日も探していたんだと思います。朝から連絡が取れないって心配してましたから。」
運良く磯山さんに遭遇できてよかった。そうでなければ、佐藤さんはひとりで苦しんでいたかもしれない。
「そんなわけで俺の家は特殊なんだけど、これからも佐藤晃太として生きていくつもり。だから、これからも一緒にいてくれる?」
彼女なのにどうして教えてくれなかったんだなんて思ったこともあったけど、それも含めて佐藤さんだ。
「よろしくお願いします。」
「よかった。隠してることが多いから、また怪しまれると思った。」
本当に佐藤さんは秘密だらけだ。サンチェス=ドマーニ好きだし、カッコいいし、御曹司だし。それに、姉がAkane!
「それより、お姉さんがAkaneだって早く教えてくださいよ。クロードの撮影も一緒だったんですよね?」
「姉ちゃんのこと知ってるの?」
「私がサンチェス=ドマーニを好きになったきっかけはAkaneなんです。次はお姉さんの写真を送ってください。できたら10枚くらいお願いします。」
「俺は1枚なのに、どうして姉ちゃんは10枚なんだよ。」
「佐藤さんの写真は見るのが大変なんです。Akaneの写真は何枚あってもいいですから。」
「あーあ。なんか熱いかも。着替えよっかな~」
「スーツですもんね、着替えた方が良いと思います。出ますね。」
立ち上がると、佐藤さんに手を掴まれた。
「着替えるんですよね?」
「そうだよ。」
佐藤さんはネクタイを緩めた。
「待ってください!出ますから!」
「ここにいて?」
足元から悪寒が這い上がってきて鳥肌が立った。この雰囲気はまずい。
「ちょっ……離してください!」
「離すと思う?寝室に彼女がいるのに。」
佐藤さんはゆっくり前髪をかき上げた。目を逸らそうとしてもできない。頭の中がぼーっとしてきてしまう。このままじゃ──
「おいで?」
くいと手を引かれて、体がぐらりと佐藤さんの方へ傾いた。