隣の部署の佐藤さんには秘密がある
「お待たせ致しましたぁぁぁー!」

 勢いよく扉を開けて入ってきた磯山さんの声で覚醒した私は、即座に体勢を立て直した。

「磯山さん!空気読んでよ!」
「助かった……」

 危うく飲まれるところだった。

「宮島様、外でお待ちください。」
「お願いします……」
「なんで磯山さんなの!?さきがいるのに!彼女がいるのに!」

 私は駄々をこねる佐藤さんを無視して寝室を出た。

 事故は回避したが心臓はドキドキし続けている。佐藤さんの顔を見たのはレセプションの日以来だ。本物は写真で見るよりもずっと──簡単な言葉では言い表せないほど蠱惑的なのだ。写真を見るだけでも苦労しているのに、私は佐藤さんと目を合わせて話せるようになるのだろうか。

 広い部屋の真ん中には、何十人も座れるソファーがあるが、洗濯物干しとして使っているのかと思うほど、たくさんの服が置いてある。

「お手伝いさんでも雇えばいいのに。」

 この様子だとキッチンはひどいことになっているだろうと思って覗いてみると、キッチンだけは新築のようにピカピカだった。ダイニングには、パーティーができそうなほど大きなテーブルがあり、その上には綺麗に畳まれてたタオルが積み重なっている。

「磯山さんが片付けたのかな。」

 磯山さんはタオルや水を持っていたけど、それだけを準備するには時間がかかり過ぎていた気がする。もしかしたら、佐藤さんの部屋を片付けていたのかもしれない。

「ちょっとやりますか。」

 佐藤さんの服をそれとなく畳んでいると、磯山さんが寝室から出てきた。

「宮島様、お待たせいたしました。お送りいたします。」
「ありがとうございます。どうやって帰ろうかと思っていたんです。」

「もう帰っちゃうの?」

 寝室からのこのこ出てきた佐藤さんを見た私は目を見開いた。佐藤さんは可愛いくまの総柄パジャマを着ていた。
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