二人で恋を始めませんか?
日曜日。
茉莉花は部署の皆からのお祝いと、優樹と選んだベビー服を手に、沙和と二人で産婦人科のクリニックを訪れる。

「失礼しまーす。華恵さーん」

控えめに声をかけて個室を覗くと、窓際のベッドで小澤と笑顔で話をしていた華恵が振り返った。

「茉莉花ちゃん、沙和ちゃん! 来てくれてありがとう」
「こんにちは、お邪魔します。あっ、赤ちゃん! 可愛いー」

華恵が腕に抱いている小さな赤ちゃんに、茉莉花も沙和もメロメロになる。

「なんて小さくて可愛いの。はあ、まさに天使ね」
「ほんと。色白で唇もちょこんとしてて、華恵さんそっくり」
「絶対美人になるわよねー。華恵さんみたいにモテモテだろうな」

二人でわいわい盛り上がっていると、小澤の低い声がした。

「おい、そんな気の早い話はするな。娘を嫁にやる父親の気持ちが分かるか?」
「やだ! 小澤部長こそ、もうそんなこと考えてるんですか? 女の子はパパが理想の結婚相手なんですよ。『パパだーいすき!』って言って抱きついてくれますよ、きっと」
「えっ、そうなのか? そんなこと言ってくれるのか?」
「まあ、それは今後のパパ次第ですけどね」
「乾! お前、上げといて落とすな」

あはは! と皆で笑い合う。

「改めまして、華恵さん、部長、おめでとうございます。これは部署のみんなからのお祝いです。それからこれは、白瀬部長から」

茉莉花がそう言って紙袋を2つ差し出すと、華恵も小澤も驚く。

「優樹が? いつの間に?」
「先日、一緒に選びに行ったんです。あ、もしよろしければ、今テレビ電話してみてもいいですか?」
「もちろん。俺たちも直接お礼を言いたい」
「はい、じゃあかけてみますね。部屋にいるかな?」

試しにかけてみると、すぐに繋がった。

「もしもし、優くん? 今、おうちにいる?」
『ああ。どうかしたか? 茉莉花』

すると華恵が「きゃー!たまんない。キュンキュンするー」と声を上げる。

『ん? 茉莉花、今どこにいる?』
「あのね、病院に華恵さんのお見舞いに来たの。優くんからのお祝いを渡したら、小澤部長も優くんに直接お礼を言いたいって。今、お二人に代わるね」

そう言ってから画面を二人に向けた。

「おおー、優樹! 元気そうだな」
『久しぶり。小澤も小林も、赤ちゃんの誕生、おめでとう』

華恵がありがとうと言って、腕に抱いた赤ちゃんを画面に見せる。

『可愛いなあ、小林にそっくりだ』
「おい、俺の血も入ってるんだぞ?」
『よかったな、小林に似て』
「どういう意味だよ、優樹!」

懐かしそうな同期同士の会話に、茉莉花も嬉しくなった。

「白瀬くん、茉莉花ちゃんすっごくがんばってるよ。こんなにいい子、逃したら絶対にダメ。大事にしてあげてね。なんて、私が言わなくても分かってると思うけど」

華恵がしんみりと言うと、優樹も真剣に答える。

『分かってる。必ず幸せにしてみせる』
「きゃー! だからもう、私のキュンキュンスイッチが止まらないんだってば!」

赤ちゃんを抱いたまま華恵が身悶えると、沙和も画面にフレームインしてきた。

「白瀬部長、茉莉花の虫除けはお任せください!」
『ありがとう。頼りにしてる、乾さん。茉莉花のそばについていてやってほしい』
「もちろんです!白瀬部長の分まで、茉莉花を愛しちゃいますよー」

沙和ちゃんったら、と茉莉花は慌てる。

「冗談だってば。お二人の愛に敵う訳ないでしょ?」
「そうそう。無敵の純愛カップル」

華恵と沙和がそう言い、茉莉花は赤くなった。
これ以上は居心地が悪い。

「じゃあ、またね優くん」
『ああ。気をつけて帰れよ、茉莉花。夜にまた電話する』

はい、という茉莉花の返事は「きゃー! キュンキュンー!」という華恵と沙和の声にかき消された。
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