私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
プロローグ
西城 幸は北陸の地方都市のコーヒショップの
窓際のカウンターに座って、アイス
カフェラテのカップを手に8月のどんより
曇った空を眺めていた。
今にも雨が降りそうなそんな空模様に
自分の心が被る。
今日は真夏のギラギラした太陽は雲に隠れて
いてまだ少しは凌ぎやすい天気だったが、
歩き回ったのでさすがに体力を奪われた。
歩道に面したカウンターで道を歩く親子や
先を急ぐサラリーマンが汗を拭きながら
歩いているのを見ていた。
その向こうには車がひっきりなしに
通っていく。
北陸の地方都市といえどもなかなか
にぎわっているのだ。
新幹線も止まるこの地方は観光客も多い。
重要文化財や昔の情緒を残した風情ある
街並みも有名だ。
もう何度目かのこの街に、写真を握り締めて
今日で最後と歩き回って疲れた脚の
ふくらはぎをそっと指圧する。
パンパンに腫れた脚にはあまり効果は
ないけれど、少し位は楽になった
気がする。
脚をさすりながら、もう次の段階に行く
べきなのかもと思いを巡らす幸だった。
ここはユキが最後にいた場所で、ユキが
帰ってこなくなってから3カ月と13日が
経つ あの朝の前日に二人で肩を寄せて
書いた婚姻届、証人欄にはユキの上司と
養護施設の院長のサインをもらっていた。
出張から帰ったら二人で区役所に出しに
行く予定だったのだ。
ユキは朝日を浴びてきらきら輝きながら
“言ってくる”と言って片手をあげて
駅に向かって歩いていった。
二人で暮らすマンションの前で、そんな
ユキを幸は姿が見えなくなるまで
見送っていた。
なぜだかわからないが胸に不安が押し寄せて
きてユキを追いかけて縋りたい想いに
抗いながら…
窓際のカウンターに座って、アイス
カフェラテのカップを手に8月のどんより
曇った空を眺めていた。
今にも雨が降りそうなそんな空模様に
自分の心が被る。
今日は真夏のギラギラした太陽は雲に隠れて
いてまだ少しは凌ぎやすい天気だったが、
歩き回ったのでさすがに体力を奪われた。
歩道に面したカウンターで道を歩く親子や
先を急ぐサラリーマンが汗を拭きながら
歩いているのを見ていた。
その向こうには車がひっきりなしに
通っていく。
北陸の地方都市といえどもなかなか
にぎわっているのだ。
新幹線も止まるこの地方は観光客も多い。
重要文化財や昔の情緒を残した風情ある
街並みも有名だ。
もう何度目かのこの街に、写真を握り締めて
今日で最後と歩き回って疲れた脚の
ふくらはぎをそっと指圧する。
パンパンに腫れた脚にはあまり効果は
ないけれど、少し位は楽になった
気がする。
脚をさすりながら、もう次の段階に行く
べきなのかもと思いを巡らす幸だった。
ここはユキが最後にいた場所で、ユキが
帰ってこなくなってから3カ月と13日が
経つ あの朝の前日に二人で肩を寄せて
書いた婚姻届、証人欄にはユキの上司と
養護施設の院長のサインをもらっていた。
出張から帰ったら二人で区役所に出しに
行く予定だったのだ。
ユキは朝日を浴びてきらきら輝きながら
“言ってくる”と言って片手をあげて
駅に向かって歩いていった。
二人で暮らすマンションの前で、そんな
ユキを幸は姿が見えなくなるまで
見送っていた。
なぜだかわからないが胸に不安が押し寄せて
きてユキを追いかけて縋りたい想いに
抗いながら…
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