私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
ただ時々夢で見る顔が見えない女性の
悲しそうな声がなんと言っているかは
わからないのだが夢の中で聞こえるのだ。

彼女はきっと俺の記憶の中にいる人
だろうから、彼女に会いたいとは思う。

俺がこの町でケンとして暮らし始めて、
2年半がたつ頃には俺はスーツを着て
黒い書類バッグを持って大きな町を
歩いている自分を夢に見る事がある。

少し記憶が戻りつつあるのだろうか?

そういえば俺が握りしめていたバッチは、
何なのか調べてみてもいい気がする。

こうして動き出すまでに2年半も
経ってしまった。

裕美が俺に心を寄せているのを
この頃ひしひしと感じる。

でも、裕美の事は妹としか見られない。

女としては絶対に無理なのだ。

きっと俺はどんな女にも感じないのだと思う。

泰樹に連れられてストリップを見に
行ったのだが、俺の下半身はピクリとも
反応しなかった。

スナックに行って時々横に座ってくる
年増のお姉さんが股間を触ってきても
全然反応しない。

ただ一人夢の中で見る
“青い瞳の俺のビーナス”以外はだめなのだ

そうだ最近”青い瞳の俺のビーナス“と
彼女を呼んでいるのを夢で見たのだ。

俺は、押し入れの中に隠していた女性用の
ファッション雑誌を取り出した。

その表紙を飾るのが,”青い瞳のビーナス”
というキャッチフレーズのモデルだ。

1年ほど前の酎ハイのコマーシャル
に出ていた。

今最高に人気のあるモデルらしい。

俺は彼女と知り合いなのか?

彼女が夢で俺の事をユキと呼んだのだ。

この頃は、このモデルが今まで顔がなかった
俺の彼女の顔になった。

だから、彼女の写真を見て下半身を慰めて
いるのだ。

生の女には反応しないのに写真の
”青い瞳のビーナス”にはとことん反応する
俺は変態なのだろうか?
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