私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない

残酷な現実

それから少し自分の事を調べてみる事にした

まずは握りしめていたバッチだ。

調べてみるとA市にある不動産開発業者の
社章だと分かった。

俺は休みの日にA市まで皆には内緒で
独りで向かった。

その不動産開発業者のビルは大層大きくて、
この辺りでは手広く商売をやっているようだ。

でも、その会社の中に入っていく気がしない
なぜか不穏な雰囲気がして足が
すくんでしまった。

その会社の前で佇んでいると、後ろから

「すみません。
刈谷宣之先生ではないですか?」

と声をかけられた。

「えっ、俺の事ですか?」

「はい、この写真とそっくりなので…」

そこにはあのモデルの彼女の隣に笑っている
俺が写っていた。

その写真を見たとたんに頭がはちきれそうに
傷んだ、俺は立っていられなくなって頭を
抱えてその場に蹲った。

「大丈夫ですか、とにかくどこかでゆっくり
お話ししませんか?」

その人はそう言って俺の腕をつかんで
立たせて近くのカフェへ連れて行った。

その人の話によると、俺の名前は刈谷宣之で
もうすぐ28歳になる職業は弁護士
だと言った。

写真に写る美しい彼女は俺の同棲相手で
俺が行方不明になる前に婚姻届けを出そうと
していた仲だと言った。

その男性は名刺をくれて東京の興信所の
名前と山梨浩二(ヤマナシコウジ)と書いてあった。

興信所では2年半余りずっと俺を
探していたらしい。
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