私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
幸は何も言い返せなかったユキも何も
言わなかった。

ユキは幸を思い出したはずだ。

その目がそう語っている。

きちんと幸を認識しているのがわかる。

18年もの間一緒にいたのだ。

幸をごまかすなんてできるはずがない。

それとも記憶喪失の話は噓で彼女とここで
暮らしたいから幸から離れるために
そういうことにしているのか?

幸はこんな風にユキを疑ってしまう自分が
信じられない。

幸はあふれる涙を止めることができず、
立ち尽くしていた。

でもユキは彼女を離さず出棺のために
幸に背を向けた。

ユキが幸に背を向けたのだ。

山梨は、

「幸さん、とりあえず帰りましょう。
今日はお葬式で皆取り込んでいる。
また日を改めましょう」

そう言って幸を連れてA市に戻った。

今日はA市のホテルに泊まる予定で
予約を入れてあった。

幸はもう放心状態だった。

ユキを見つけたら言いたいことが
山のようにあった。

そして、モデルになったことは
謝ろうと思った。

結局モデルになったのは何の意味もなかった

でも、モデルの収入がなければ興信所の
お金を払い続けられなかっただろう。

結局、興信所の担当の山梨がユキを
見つけてくれたのだ。
ユキが見つかったならすぐに帰って
来てくれると思っていた自分が、
バカだったのだ。
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