私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
この2年半ユキには新しい生活が
始まっていたんだ。

2年半前から動けずにいたのは
幸だったのだ。

ユキを見つけさえすれば元の生活に戻れる
なんてなぜそんな風に考えて
しまっていたんだろう。

ユキの幸を見る目には憐憫と謝罪の
色があった。

幸は山梨に東京に帰ると言った。

もうここには居たくなかった。

ユキと彼女の暮らすこの地方に
いたくなかった。

今でも、彼女を胸に抱くユキの姿が
脳裏を離れない。

ユキはもう幸の元には戻ってこないだろう。

その夜遅くマンションに着いた幸は、
ユキとの思い出がいっぱい詰まった部屋を
見てまた涙を流していた。

こんな風ではしばらく仕事もできない
かも知れない。

社長の貝原に電話して泣きながら
詳細を伝えた。

もうこのマンションに居たくないというと
また涙があふれてきた。

貝原には何度も引っ越せと言われていたのだ
セキュリテイの良いもっと都心に近い所の
マンションに引っ越せと再三言われていた
のにユキがひょっこりと帰ってくるかも
しれないという期待が捨てられず、
ユキとの思い出が詰まったマンションから
出られなかった。
でも、ここから離れないと幸は次に進めない。

初めてこのマンションを離れなければと
言う思いがよぎった。

貝原に引っ越したいというと直ぐに
マンションを用意するから
心配するなと言われた。
< 47 / 125 >

この作品をシェア

pagetop