私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
それからの日々は仕事に明け暮れて
過ごした。

初めて演技をするという事にも戸惑って
いたが、案外幸には素養があったようで
演技というよりその人物にすっと
感情移入ができていたので、演技自体に
戸惑ったり悩んだりすることはなかった。

結局その後も、連続ドラマの仕事が入って
予定の半年をオーバーすることにはなったが
貝原は仕事を辞めるという結論は後で
いいから少し自由に旅行でもしてくれば
いいと言ってボーナスだからと言って
通常の給料以外に100万をポンとくれた。

もし仕事を辞めると決めたなら退職金と
思って受け取ればいいと言ってくれた。

幸は貝原に感謝して、ありがたく頂いた。

これからの事を考えて、ユキを待ち続けた
2年半を振り切らなければならない。

今のマンションの賃料は事務所が払って
くれているのでどちらにしても早く結論を
出さなければならないだろう。

幸は一人で旅行に行ったことがなかった。

ユキが弁護士として働くようになって金銭的
には楽になったが、忙しくてなかなか幸との
休みもあわなくて、ユキともゆっくり旅行に
行った事はなかったのだ。

そういう訳で幸は少しの不安はあるものの
これからは何でも一人でやって
いかなくてはならない。

幸はとりあえず暖かい沖縄に行く事にした。

そういえば幸の母親の故郷は沖縄だと
言っていた。

沖縄に行ってみよう。
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