私を忘れた彼を やっぱり私は忘れられない
幸を諦めることもできない。

幸が俺を弁護士にしてくれたのだ。

幸の献身があったから俺は最速で弁護士の
資格を取ることができた。

幸もまたもう一人の俺の大切な家族なのだ。

施設で出会った8歳の時から18年間俺の
大切で最愛の家族なのだ。

それを今日痛感した。

一つの家族を守るためにもう一つの家族を
切り捨てなければならないのだろうか?

二つの家族を同時に守ることは
できないのだろうか?

俺は穏やかな海を眺めながら、堂々巡りに
なる思考に幸への切ない思いと、
幸を傷つけて守ってやれない虚しさと
自分へ不甲斐なさに胸が張り裂けそうだった

俺は幸を守るために弁護士になったのに…

貝原社長はそれなら自分が幸を
もらうと言った。

その時は彼に殴りかかりそうになった。

自分にはそんな資格もないくせに、
でも絶対に幸を取り戻す。

それだけは決めている。

この穏やかな海を見ていると、
きっとできるような気がする。

俺は幸しか愛せないし幸しかいらないのだ
幸がいれば何もいらない弁護士を返上しても
悔いなんかない。

もし貝原社長と幸が結婚したらと思うと
吐き気がするが、俺は幸との絆を信じる
事にした。やるしかないのだ。

今日裕美には俺の過去について詳しく
話すつもりだ。幸の事も含めて…

それで、裕美のしたいように
してやるつもりだ。

俺と東京で暮らすか、この村で暮らすか
とにかく裕美が結婚するまで兄として
ちゃんと面倒を見るつもりだ。
< 73 / 125 >

この作品をシェア

pagetop