鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
だからこそ年上の男性社員には特に厳しくしなければならない。

(えらそうじゃないといけないのよ。社長なんだから)

左隣を見ると、口の端を下げた父がゆっくりと頷いた。

絢乃の対応でいいという意味で、それについてはホッとしたけれど胸の重苦しさは消えない。

小娘に叱責される社員もストレスだろうが、絢乃だってきつい。

好きで〝鉄の女社長〟を演じているわけではないのだから。

(ひとつずつ実績を積んで、いつか父を解任する日まで耐えないと)

会議が終了したのは十二時半だった。

社長室に戻り、執務椅子に腰を落とす。

つり上げていた目から力を抜くと、社長としての厳しさまで緩んでしまう。

(悔しいわよね。反論したくてもできない気持ち、私にもわかるわよ)

営業部の部長に対し、申し訳ない気持ちになる。

ここ三か月の契約件数は目標をクリアしていた。

その努力をもっと認めるべきだったのではと考えていた。

厳しいばかりでは社員のモチベーションは上がらない。

飴と鞭にたとえると、鞭に大きく比重を傾けていたが、もう少しバランスを取った方がいい気もする。

(でも、そんな態度では父に『甘い』と言われるわ。どうしたら……そうだ、昴さんも社長よね。どんなふうに社員に接しているのかしら)

家での昴は時々冗談を言って絢乃を笑わせようとする気さくな人だ。

面倒見がいいところもある。

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