鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
日用品や食材は昴が宅配を利用して不足がないように補充してくれるし、週に二回来てもらっているハウスクリーニングの業者とのやり取りも率先してやってくれていた。

約束通り料理も教えてくれる。

みそ汁を教わった先週の朝を思い出してフッと笑った。

絢乃の包丁さばきは拙いもので、大根をイチョウ切りにするのに手間取った。

薄く切れなかったので煮えるのにも時間がかかり、出勤時間を気にしながら豆腐を入れた際に、煮え立つだし汁を思いきり指にかけてしまったのだ。

その手を昴が掴み、急いで流水で冷やしてくれた。

(昴さんの手、大きかったわ)

手の甲を握られた感触が今も残っている。

冷やしている間、背中を抱きしめられるような格好だったので緊張した。

その時の鼓動の高まりも忘れていない。

(男性に慣れていないのに気づかれていそうで恥ずかしい)

みそ汁の他に、トマトソースのスパゲッティやハンバーグを作った日もある。

絢乃がどんなに下手でも昴は呆れずに教え、フォローもしてくれた。

『茹ですぎた? ああ、たしかに軟らかいけど、これはこれでいいよ。子供の頃の家でのスパゲッティがこのくらいだったな。懐かしい味に出会えて嬉しい』

『ほんとだ。ハンバーグが派手に崩れたな。ナイフいらずで食べられて助かるよ。ありがとう』

そんなふうに言って笑ってくれたから、失敗を恐れずもっと料理を習いたいと思えた。

(昴さんは上手に私のやる気を引き出してくれた。会社でもそういう感じ?)

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