荒廃した世界で、君と非道を歩む
月明かり
窓の外には、漆黒の空に金色の月がこちらを嘲笑うかの如く堂々と浮かんでいた。
外から室内へと吹き込むそよ風を窓辺に設置された椅子に座って感じながら、ぼんやりとした何を見るでもない視線を外に向ける。
これまで上手くやって来たはずなのに、自分達は何処で間違えてしまったのだろう。
どうして新汰に気づかれてしまったのだろう。志筑が“そう”であり、自分は辛い事柄逃げ回っていることを。
「ほんと、最悪……」
抱えた膝に顎を乗せ、窓の外を覗き込む。誰もいない室内に当然音という音があるはずもなく、田舎町ということもあって奇妙なほどに静かだ。
その静けさも相まって、怒りと興奮で暴れ乱れた蘭の心を静かに浄化していく。
金色の月を見上げていると志筑の鋭い瞳と姿が重なった気がした。新汰と言い合いしている時の志筑のやるせないといった微妙な表情が蘭の脳裏に蘇る。
「早く帰って来ないかな」
こうして独りでいると考えたくないことまで考えてしまう。そんな事はありえないと自分に言い聞かせたとしても、もしかしらたという言葉が後を追って不安を掻き立てるのだ。
このまま宛もなく死に場所を求めて殺人鬼と旅を続けるか、今ならまだ取り戻せる自分の未来のために大人しく警察に行くか。
自分に与えられた選択肢はないに等しい。初めからこの逃避行を続けるという選択肢すら与えられていなかったのかもしれない。どうすればいいのか、もう何も分からなくなっていた。
「蘭、いるか」
扉が開かれたと同時に部屋の中に志筑の声が響き渡る。志筑が部屋に入ってくる姿を蘭は今いる場所から障害物に隔たれること無く見ることができた。
「……遅かったね。新汰と何か話してた?」
「いや、別に何も。売店でアイス買ってきたから食べよう」
蘭が座っている席の向かい側に志筑は座り、蘭にアイスキャンディーを手渡す。表面に結露が見られて手が濡れてしまうが、蘭は志筑から何かを与えられたことが嬉しいと感じたため気にすることはなかった。
ちらりと何気なく向かいにいる志筑に視線を向けると、彼はソーダ味のアイスを咥えて窓の外を見ている。
夜空に浮かぶ月を見つめる琥珀色の瞳は、反射した月と同化して一層その色味を強めた。
「溶けるぞ」
「うん」
短い会話だとしてもこの時間が今はただ幸せだと感じる。終りが近づいていたとしても、もう志筑から何かを与えられることがなくなってしまったとしても、自分はこの人から離れない。離れたくないのだと強く願う。
袋を破り取り出したアイスキャンディーは、表面が溶けてしまったのか雫を蘭の掌に落とした。
外から室内へと吹き込むそよ風を窓辺に設置された椅子に座って感じながら、ぼんやりとした何を見るでもない視線を外に向ける。
これまで上手くやって来たはずなのに、自分達は何処で間違えてしまったのだろう。
どうして新汰に気づかれてしまったのだろう。志筑が“そう”であり、自分は辛い事柄逃げ回っていることを。
「ほんと、最悪……」
抱えた膝に顎を乗せ、窓の外を覗き込む。誰もいない室内に当然音という音があるはずもなく、田舎町ということもあって奇妙なほどに静かだ。
その静けさも相まって、怒りと興奮で暴れ乱れた蘭の心を静かに浄化していく。
金色の月を見上げていると志筑の鋭い瞳と姿が重なった気がした。新汰と言い合いしている時の志筑のやるせないといった微妙な表情が蘭の脳裏に蘇る。
「早く帰って来ないかな」
こうして独りでいると考えたくないことまで考えてしまう。そんな事はありえないと自分に言い聞かせたとしても、もしかしらたという言葉が後を追って不安を掻き立てるのだ。
このまま宛もなく死に場所を求めて殺人鬼と旅を続けるか、今ならまだ取り戻せる自分の未来のために大人しく警察に行くか。
自分に与えられた選択肢はないに等しい。初めからこの逃避行を続けるという選択肢すら与えられていなかったのかもしれない。どうすればいいのか、もう何も分からなくなっていた。
「蘭、いるか」
扉が開かれたと同時に部屋の中に志筑の声が響き渡る。志筑が部屋に入ってくる姿を蘭は今いる場所から障害物に隔たれること無く見ることができた。
「……遅かったね。新汰と何か話してた?」
「いや、別に何も。売店でアイス買ってきたから食べよう」
蘭が座っている席の向かい側に志筑は座り、蘭にアイスキャンディーを手渡す。表面に結露が見られて手が濡れてしまうが、蘭は志筑から何かを与えられたことが嬉しいと感じたため気にすることはなかった。
ちらりと何気なく向かいにいる志筑に視線を向けると、彼はソーダ味のアイスを咥えて窓の外を見ている。
夜空に浮かぶ月を見つめる琥珀色の瞳は、反射した月と同化して一層その色味を強めた。
「溶けるぞ」
「うん」
短い会話だとしてもこの時間が今はただ幸せだと感じる。終りが近づいていたとしても、もう志筑から何かを与えられることがなくなってしまったとしても、自分はこの人から離れない。離れたくないのだと強く願う。
袋を破り取り出したアイスキャンディーは、表面が溶けてしまったのか雫を蘭の掌に落とした。