魔法使い時々王子
翌日、アリスは庭園の小道を歩いていた。
冬の空気は澄んでいて、吐く息が白く溶けていく。
ふと、薬草園のほうから人影が見えた。大きな籠を抱えて、背筋を伸ばして歩くセラだった。

「あっ、アリス王女様!」
彼女は相変わらずの笑顔で駆け寄ってくる。
「この前は薬を受け取ってくださってありがとうございました。あれから体調はいかがですか?」

「ええ、おかげさまで。あなたが調合してくれたのね?」

「そうです! あれは私の得意な配合なんですよ。――まあ、正確には、アスタリトでは風邪の初期によく使うやつなんですけどね」

「アスタリト……」
アリスは思わずその名を口にした。
「そこの薬草は、こことは違うの?」

「似てますけど、育つ環境が違うから効き方も少し違うんです。アスタリトの冬はもっと厳しいから、薬も強めなんですよ」
セラは笑いながら籠の中の瓶を揺らして見せた。
「今度、特別に作って差し上げますね。アリス王女様用に!」

その無邪気さに、アリスは思わず頬を緩めた。
――やっぱりこの人、王女という肩書きを気にしていない。
不思議な親しみやすさがあって、会話が息をするように続いてしまう。

別れ際、セラが振り返って手を振った。
「またお会いできるのを楽しみにしてます!」

アリスはその背中を見送りながら、心のどこかでまた“アスタリト”という言葉が残っているのを感じた。
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