魔法使い時々王子
アリスは胸の奥がざわつくのを感じた。

ミロは「話は済んだ」と言い、イスタリアは「まだ終わっていない」と主張している。

同じ出来事のはずなのに、まるで違う話をしているようだ。

その沈黙を破ったのは、マルグリットだった。

「……星晶の話だろう?」

アリスとリトははっとして顔を上げる。

マルグリットは椅子にもたれ、二人を見た。

「王宮中、その話で揉めとるえ。星晶を使うだの、使わんだの……」

ノエルは黙って聞いている。

マルグリットはゆっくりと本を撫でた。

「わしは長く記録を見てきた。星晶に手を出して、ろくな終わり方をした国は一つもないえ」

その言葉に、アリスの脳裏に昨日読んだ資料が浮かぶ。

滅びかけた国。

暴走した魔力。

封印された記録。

リトが低く言う。

「……それでも、使わせようとしてる奴がいる」

マルグリットは鼻で笑った。

「権力ってのは、そういうもんだえ。手に入るなら、使えると思う、自分だけは失敗しないと思う」

ぎょろりとした瞳が、ゆっくりアリスに向けられる。

「王太子妃様」

「あなたは、どう思うんだえ?」

地下の空気が、急に重くなった。
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