魔法使い時々王子
仮装って、何にすればいいの?」

アリスが尋ねると、リトは面倒そうに肩をすくめた。

「何でもいい。魔女でも、猫でも……ニワトリでもな」

投げやりな言い方だった。

リトは明らかに嫌そうだ。

けれどアリスは、ふと胸が弾むのを感じた。

いつもの堅苦しくて退屈な舞踏会より、ずっと面白そうだと思った。

その時、遠くで鐘の音が響いた。

アリスははっと顔を上げる。

「マルグリットさん、ありがとうございました。また来て、いろいろお話を聞いてもいいですか?」

マルグリットはくつくつと笑った。

「ほっほっほ、いつでも来てくだされ」

その言葉に、アリスは小さく頭を下げた。

ぺこりと礼をすると、そのままリトと共に部屋を後にする。

地下の静けさの中に、再び紙をめくる音だけが戻っていった。

三人は地下を後にした。

石の階段を上りながら、リトがぽつりと呟く。

「……星晶の件は、少し保留か?」

その言葉に、アリスはわずかに表情を曇らせた。

「そうね……」

少しだけ悔しそうに視線を落とす。

「少なくとも、仮装舞踏会が終わるまでは……ミロは話を進める気はなさそうだった」

リトは小さく舌打ちする。

だが、それ以上は何も言わなかった。

やがて地上へ出ると、アリスはノエルの方へ向き直る。

「ノエルさん、ありがとうございました」

ノエルは柔らかく微笑んだ。

「いえ。私にできることでしたら、いつでも」

「どうぞ、なんなりとお申し付けください」

その言葉を残し、ノエルは静かにその場を後にした。
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