魔法使い時々王子
第二十三章 ひそやかな夜の邂逅
王宮は、いつになく慌ただしかった。

廊下を行き交う侍女たちの足音。
運び込まれる装飾品や衣装。
仮装舞踏会に向けた準備が、至る所で進められている。

その空気の中で、アリスもまた支度の一端を整えていた。

ルーナが用意した衣装は黒のシンプルなドレス。

無駄のない美しいシルエットに、つばの広い大きな帽子。
そして手には、細身の箒。

「……魔女、なの?」

「はい」

ルーナは静かに頷いた。

「とてもお似合いです」

いつもは感情を表に出さない彼女だが——
心なしか、その声にはわずかな熱がこもっているように感じられた。

アリスは鏡の中の自分を見つめた。

黒に包まれたその姿は、どこかいつもとは違って見える気がした。

(……悪くないかも)

そう思い、小さく微笑む。

ルーナと共に仮装の衣装を決め終えると、アリスはその足でアウルム図書館へと向かった。

扉を開けると、変わらぬ静寂が迎える。

そして——

リトはいつもと同じ場所で、本を開いていた。
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