魔法使い時々王子


「それで、ミロでの暮らしはどうだ?」

ダリウスが穏やかな声で尋ねた。

「ええ、まずまずやっているわよ」

アリスは小さく微笑む。

「あなたは? 最近はイスタリアに帰ったの?」

その問いに、ダリウスは静かに首を横に振った。

「いや。お前とイスタリアで会った時以来、一度も帰ってない」

「そう……」

どうやら相変わらず、気ままな旅を続けているらしい。

昔から、ひとつの場所に長く留まる性格ではなかった。

「それより」

ダリウスは少し眉を寄せる。

「まさか、お前……ここへ一人で来たんじゃないだろうな?」

「まさか」

アリスは苦笑して首を振った。

「一緒に来た人がいるの。でも、さっきはぐれてしまって……」

そう言って、アリスは人混みの中へ視線を向けた。

(ローズ、どこへ行ったのかしら……)

その時だった。

「アリスー!」

聞き慣れた声が会場に響く。

振り返ると、人混みをかき分けながらローズが駆け寄ってきていた。

「ローズ!」

アリスはほっと胸を撫で下ろす。

「よかった……」

ところが、ローズはアリスの隣に見慣れない男性が立っていることに気付くと、ぴたりと足を止めた。

「あら?」

少し驚いたように、アリスとダリウスを交互に見つめる。

「あ、ローズ。紹介するわ」

アリスは微笑みながら言った。

「こちら、私の従兄弟のダリウス。偶然ここで会ったの」

ダリウスは一歩前へ出る。

そして、ローズの手をそっと取ると、流れるような所作で片膝をついた。

「初めまして。ダリウスと申します」

その洗練された挨拶に、ローズは思わず目を丸くした。

そして次の瞬間――

ぱっと花が咲くように表情を輝かせた。
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