魔法使い時々王子
「……シド?」

不意に声をかけられ、シドは顔を上げた。

書庫の扉の前には、セラが立っている。

「こんなところにいた。探したよ」

「セラか。どうした?」

「ロザリア様から伝言。建国記念日の式典で使う資料と魔導具の最終確認を手伝ってほしいって」

「ああ、分かった。すぐ行く」

シドは書きかけの手紙を静かに畳み、引き出しへしまった。

まだ、この手紙は出さない。

そんな思いを胸にしまい込むように。

二人は並んで廊下を歩き、式典の準備室へ向かった。

机の上には山のような資料が積まれ、式典で使用する魔導具も並べられている。

シドは書類を整理し、セラは魔導具の数を確認していく。

静かな作業がしばらく続いた。

やがて、セラがふと手を止める。

「ねぇ、シド」

「ん?」

「最近、少し元気がないように見えるけど……大丈夫?」

その言葉に、シドは思わず顔を上げた。

「……どうしてそう思う?」

「ううん、なんとなく」

セラは小さく笑う。

「ここ最近、ずっと式典の準備で忙しいでしょ? あんまり休めてないのかなって」

シドは少しだけ考え、それから首を横に振った。

「俺は大丈夫だ」

そう言って、今度はセラの方を見る。

「セラこそ、休めてないだろ」

「そうねぇ」

セラは困ったように笑いながら肩をすくめた。

「身体は大丈夫だけど……式典が終わったら、ぱーっと遊びに行きたいな!」

その言葉に、シドは思わず笑みを浮かべる。

「はは……そうだな」

そして、小さく呟いた。

「式典が終わったら――」

その先の言葉は、口にできなかった。

建国記念日の式典が終われば、きっと物事は大きく動き出す。

アリスの答え。

星晶を巡る決断。

そして、自分が選ばなければならない未来。

(……式典が終わったら、どうなるだろう)

シドは静かに視線を落とし、手元の書類へと戻った。
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