激重年下わんこに懐かれてます
 仕事から疲れて帰った私を出迎えたのは、この前拾ったわんこのような男の子だった。
 男の子……というのは彼に怒られるかな。でも二十代前半なんて、アラサーの私からしたら「男の子」にしか見えない。

「お帰り」
 にこっと彼は笑う。優し気に整った笑顔は、夕方の優しい日差しのようだった。

 私はそれだけでほっとして、すべての疲れが溶けて流れていく錯覚に陥った。
 彼が伸ばす手に、私は自然とバッグを渡す。

「なんか……疲れてるね」
「うん……」

 私は素直に頷く。特になにかあったわけじゃない。いつも通りに会社に行き、いつも通りに働いて帰って来ただけ。なのにすごく疲れてる。季節のせいもあるかもしれない。

 季節の変わり目の五月。世界は明るいのに、はりきりすぎたあとみたいに妙に疲れてしまう。

 彼はバッグを床に置くと、ぎゅっと私を抱きしめた。
「ちょ、なに!?」

「ハグしてんの。知ってる? ハグには精神的に落ち着く効果があるんだよ」
「知ってるよ、だけど……!」

 初夏の今、汗かいたりしてて、お風呂にも入ってないのにこれはやばい!
 くんくんと髪の匂いをかがれ、私の顔がカーっと熱くなる。

「ああ、いい匂い。大好き」
「なにその羞恥プレイ!」
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