(番外編集)それは麻薬のような愛だった
——ああ、そっか…
今まで、なぜ伊澄が誰とも長く続かなかったのかが分かった。
きっと今の私のように、目の当たりにしてきたのだろう。
伊澄には本人ですら気付いていない、特別な女の子がいることを。
本人が気付いていないのが一番たちが悪い。だってそれなら浮気だって言えないし、それを責めたって伊澄には何も響かない。
かといって気付かせてあげるなんて、そんなお人好しなことはしたくない。だって、私だって——私達だって、伊澄の事が好きなのだから。
「もう…なんなのよ…」
私は立ち尽くし、静かに涙を流した。
気付いてしまった以上、知らないふりは出来ない。自分以外に向けるあんな表情を見てなお、期待をできるほど私は強くない。
——もう、やめよう。こんなの虚しいだけだ…
「…っく、…」
私の静かな泣き声は、雨の音に完全にかき消されてしまった。