おしゃれなWi-Fi
お巡りさんを呼んでミイラを引き取ってもらったあと、
先生と子どもたちはお茶の時間です。おやつは先生手作りの、赤いドライチェリーの乗った花の形のクッキーです。
「だから、あの男のひとの罪は住居侵入罪だけ」
「そんな、」
がっかりする子どもたちの頭を、先生は順番に撫でます。先生の手はとても冷たくて、
しかしとてもやさしく大きな手でした。
「これから、可視化・加工化Wi-Fiを使用する際のガイドラインや法律が整えば良いけどね」
「じゃ、じゃあ先生は、常に命を狙われているってこと?」
少女が声を震わせて訊きます。先生は、困った顔をして、首を横に振りました。
「そうじゃないよ。可視化・加工化Wi-Fiの技術は、
私を含めて研究者の数人しか知らない。
でも、ひとの口に戸は立てられないからね。どこかから漏れたんだろう」
「大丈夫! 先生は俺たちが守るから!」

少年が勇ましく言います。しかし、先生は少しさびしそうに笑って、
それから静かに言いました。
「きみは私を守るためにWi-Fiでナイフを作るつもりかい」
「!」
少年が目を見開きます。先生はおだやかに続けます。

「Wi-Fiはみんなをつなぐ縁の糸だよ。誰かを傷つけたり殺したりするためのものじゃない」
「でも、先生がまた狙われたりしたら!」
少年が声を上げて、みんなもうなずきます。先生はやさしく微笑みます。
「ありがとう。大丈夫。みんなのことは私がちゃあんと守るから」
「じゃあ、先生のことは誰が守るの?」
少女が心配そうに言います。先生はちょっと目を丸くしましたが、
すぐに、
「彼だよ」
と、
おちびさんの抱いているくまを指差しました。

「彼はふわふわしたWi-Fiで出来ているけれど、
実はおなかの中がとっても固いんだ」
子どもたちが目を丸くして、くまにさわります。なるほど、
表面はふわふわしていますが、中には何か芯のあるものが入っていました。
「でも、俺たちだって先生のこと守れるはずだ!」
「そうよ! Wi-Fiでレース編みが作れるなら、
ナイフじゃなくても先生を守れるものが作れるはずよ!」
「はい!」
子どもたちの勇ましい言葉に、先生の目がやさしい色に染まります。
子どもたちは知りません。実は、

彼らの大好きな先生もWi-Fiでできていることを。
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