(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
食事の途中、お互いを意識してか少し微妙な雰囲気にもなったけれど、これまで彼女が手がけてきた翻訳に興味があると伝えると、その話題でデザートが終わるまで話が途切れなかった。

俺がいろいろ質問したり、ちょっとピントのずれた受け答えをしたこともあってか、彼女はたくさん話をしてくれたし、よく笑ってもいた。

「あー・・。寺嶋さん、すみません。すっかり話し込んでしまって。もう22時を回っているし、送ります」

俺は先に通りに出て、タクシーを探した。
数台見送った後でつかまえることができ、彼女と乗り込む。

「こちらこそ・・。なんだか私ばかり話していたような気がして・・すみませんでした」

「いえ。いろいろ聞いたのは僕の方だから。楽しかったし、平嶋さんが謝ることないですよ」

「それならいいんですけど・・・・」


その後はお互いに窓の外の景色を眺めていて、到着まで言葉を交わすことはなかった。

彼女も何か考えているようだったけれど、少なくとも俺は、景色を眺めながらぼんやりと彼女に対する気持ちを確認したような気がする。

『好意を持って接してくれているかもしれない・・っていう、勘違いです』

そう。
俺は彼女に『好意』を抱いているんだ。

何がとか、どこがとか、そういう明確なものではないけれど、彼女を『いいな』と感じていて、触れたいと思っているのだから。



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