（改稿版）小児科医の恋愛事情 ～ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ～

「茉祐は今日、家で仕事だったよね。邪魔したら悪いから、コーヒー飲んだら帰ろうかな」

「え、帰るの？　出勤するんじゃなくて？」

「俺、今夜当直なんだ。だから、出勤するのは１７時くらい。朝はのんびりしてても大丈夫で、昼から少し寝て準備しようと思ってる」

「そう･･なんだ。じゃあ、朝ご飯一緒に食べる？　簡単なもので良ければ･･」

俺の腕から抜け、彼女はキッチンに向かった。
棚や冷蔵庫をのぞいて『えーと･･』と考えている様子を見て、俺は自然に彼女との結婚生活を思い描く。

ハッとして、ひとり焦る。
･･いくらなんでも、結婚は早いだろ。

過去に付き合った女性は何人かいた。
『つまらない』
別れ際にそう言った、あの女性も含めてだ。

でもこんなふうに、ごく自然に結婚生活がイメージできるような女性はいなかった。

とはいえ、これから俺が今よりも忙しくなったり、不規則な勤務ですれ違ったりするようになれば、錯覚のままで終わるのかもしれない。

「祐一郎？　何か仕事で気になることがあるなら、もう帰る？」

彼女には、俺が考え事でもしているように見えたんだろう。
まさか彼女との結婚生活を思い描いているなんて、想像もしていないはずだ。

『茉祐と結婚したら、毎朝こんな感じなのかなって考えてた』

さすがにそれは口にはできず、空腹でぼんやりしていただけ･･と答えた。