(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「あの・・先生、お願いがあるのですが・・」

彼女が遠慮がちに俺を見る。

「お願い・・ですか? 何でしょう」

「薬の効き目が強くて、少し・・眠くて」

「あ・・横になりますか? 待機室の奥にベッドがあるので、良ければそこで」

頷いた彼女を、車椅子に乗せたまま連れて行く。

一瞬迷ったものの、彼女を抱き上げてベッドに寝かせた。
薬の効き目でウトウトした状態になっているから、自分で車椅子から移動してケガでもしたら困ると思って。

それにしてもだ。
さっき車椅子に乗せた時も感じたけれど、思いのほか軽かった。
俺が182センチで、頭ひとつ分以上の差があったから・・・・彼女は155センチくらいだろうか。


横になった彼女からはすぐに寝息が聞こえてきた。
とはいえ、ここにひとり残して行くのもどうかと考え、俺はベッド脇の椅子に腰掛ける。

「大翔に貸しひとつだな・・」

落ち着いた様子で眠っている彼女を見ていたら、俺もなんだか眠くなってきて、椅子に座ったまま壁にもたれて瞼を閉じた。


「西島先生・・?」

誰かに呼ばれた気がして目を開けると、上半身を起こして起き上がっていた彼女と目が合う。

「あ・・目が覚めたんですね。具合は? 痛みや寒気は?」

「は・・い・・なんとか」

無理に笑顔を作ろうとする彼女に近寄り、額と首筋に手を当てて様子を確かめる。

「無理に笑ったりしなくていいんですよ。我慢もしなくて大丈夫。熱は無さそうだし、冷や汗も治まったようですね・・・・帰れますか?」

「はい。タクシーで帰るので、多分平気です」

「・・じゃあ、近くまで一緒に行きますよ。このままひとりで帰して何かあったら、後で大翔に怒られそうだから」

そう言うと、彼女は容易に想像できたのか苦笑いを浮かべた。



< 4 / 120 >

この作品をシェア

pagetop