（改稿版）小児科医の恋愛事情 ～ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ～

『またメシか酒に付き合ってほしい』と言いつつ、大翔は帰って行った。

俺は病院に戻ったものの、心のどこかで晴れない気持ちを抱えていた。
大翔は辛くなったら、彼女のことが浮かぶんだな･･と。

やっぱり心の狭い男なんだろうか、俺は。

でもふたりだけで会って、大翔に弱いところを見せられたら彼女はどう接するだろう。
大丈夫だと笑い飛ばすようなタイプじゃない。
どちらかというと、親身に耳を傾けるタイプだ。

お互い情が移って、そのまま･･なんてことになったら････。

大翔は身近な人間だけに、耐えられそうにない。
考えているとたまらなくなって、思わず彼女に電話する。

『もしもし？　祐一郎どうしたの？　もう勤務が始まる時間だよね』

「あー･･うん。もう行くんだけど、茉祐どうしてるかなと思って」

『心配してくれてたんだ。なんとか終わりが見えてきて、少し気が楽になってきたところ。
明日の夜から泊まりだし、そろそろ終わらせないとね』

「それなら良かった。そうだな･･あとちょっとだからこそ、無理しないで。じゃあ」

電話を切ってため息をつく。
いい恋人を装って、何を探ってるんだ俺は。

医局のロッカーで着替えをし、なんとか気持ちを切り替える。
長衣を羽織ると、ようやく担当の患者さんのことが頭に浮かんできた。

「田中さん･･検査結果を確認して処方を見直して･･もう点滴は終わりでいいかな･･」

自分に言い聞かせるように小声でつぶやきながら、俺はナースステーションに向かった。