(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
それから1時間ほど食事をしたりお茶を飲んだりしながら、会議の準備状況を聞く。
俺は彼女の話を聞きつつも、あのふたりが早く帰ってくれればいいのにと気が気じゃなかった。

「そろそろ会議場に戻らなきゃ。あ・・でも、ケーキを冷蔵庫に入れないとダメよね」

「それなら俺が冷蔵庫に入れて、部屋のキーをフロントに戻しておくよ。茉祐、準備とかあるんだろう? このまま行った方が早いし」

「ほんと? ありがとう、助かる。そうさせてもらおうかな・・。祐一郎は時間大丈夫なの?」

「ああ。今夜は当直だから、このまま出勤するよ。だからまだ大丈夫」

ロビーで彼女を見送り、俺は上りのエレベーターに乗る。
ふーーーっと長い息を吐いた。

彼女が、あのふたりに会わずに済んでよかった。

俺が目撃してから既に1時間以上経っていたこともあり、さすがにふたりを見かけることも無く、俺はホテルを後にした。

電車から外の景色をぼんやりと眺めながら、改めて会いに行って良かったと思う。

もしかしたら、大翔が夜に行くかもしれない。
それでも、俺は思いの外不安にはならなかった。

俺を『甘くなった』と言い、俺の言葉に頬を赤くした彼女を見たからだろうか。

俺の甘さには裏がある。
でも男なんて、みんなそうなのかもしれない。

彼女がそう受け取っていないなら、それでいい。

ところで、大翔と言い争っていたあの後ろ姿の男に既視感がある。
いったいどこで見たんだ・・?



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