(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
深夜の休憩で小児科の医局に戻った俺は、ふとテーブルの上に置かれていた新幹線のおもちゃが目に入った。

新幹線・・か。

あ・・。
そうだ。
あの後ろ姿。

新神戸駅で彼女と話していた、あの男だ。
そして、彼女をホテルに送って行った帰りにすれ違ったのも、いま思えばあの男のような気がする。

『前に翻訳をしたことのある先生で・・同じ学会にいたみたい』

ということは、国際会議に出席するために現れて、会場で彼女を見かけたのか・・?

でも、大翔は直接彼女にホテルの部屋番号を聞くことができたとして、なぜあの男まで彼女の部屋の前にいたのだろうか。

『かなり飲んで酔った時に、一度だけ・・』

大翔が、彼女がフリーランスになった経緯を話してくれた時に口にしていたこの言葉が、急に頭の中によみがえる。

茉祐・・。

一緒に暮らしていて、あの男に気を配っている様子は全く感じなかった。
だから、俺に隠れてどうこうというのは無いと思う。

でも、学会や会議の度にこんなふうにモヤモヤするのは、さすがに勘弁だ。

今回・・ハッキリさせよう。
明日、明後日なら時間も取れる。

スマートフォンの待ち受けには、ふたりで撮った写真が置いてある。
それを見ながら、甘く接する俺に顔を赤くした彼女を思い出した。

絶対に手放したくないからこそ。
責めないように、追い詰めないように、ゆっくり彼女と話をしようと思った。



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