(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
「茉───」

「おっ、西島!」

声を上げたのは高浜教授だった。
彼女が驚いた表情でこちらを振り返る。

「高浜教授、いらしてたんですか。神崎先生も。平嶋さん・・お疲れさまです」

彼女が話をしていたのは高浜教授と神崎先生で、さすがにふたりの前で彼女を名前呼びするわけにはいかず、『平嶋さん』と呼んだ。

「ああ、神崎の雄姿を見つつ、茉祐子ちゃんに会いにな」

「茉祐子・・ちゃん・・・・?」

高浜教授が、彼女を『茉祐子ちゃん』と呼んだことに違和感を感じる。
以前、大学病院で話をした時には『美人の翻訳家さん』としか言っていなかったはずだ。

「おい高浜、ひと前で大人の女性を呼ぶのに『茉祐子ちゃん』は無いだろう」

「あっ、ああ・・そうだな。平嶋さん、申し訳ないね。西島の前だから油断したよ」

「いえ、お気になさらず・・。それより、そろそろ次のアジェンダが始まるんじゃないですか?」

彼女が促すと、ふたりは腕時計に視線を落とす。

そういえば、神崎先生は迎えに行った時と髪型が違うんだな・・。
あの時は、長時間フライトのすぐ後だからヘアセットをしていなかったのか、今日は整髪料でしっかりセットされていた。

「神崎は次もコメンテーターなのか?」

「いや、次は会議室の端で傍観者だ。じゃあ、西島くん、寺嶋さん、僕らはここで失礼するよ」

ふたりが会議室に向かって振り返ったタイミングで、俺と彼女は頭を下げた。



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