(改稿版)小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
8.プロポーズ
「国際会議の後に茉祐をホテルに迎えに行って、そのまま温泉もいいなって考えて車を出したんだけどね。また今度、連休が取れた時に行こうか」

「うん。次は私も宿探しとかするね」

翌朝、ふたりで遅めの朝食を取る。
もともと休みを取っていたし、温泉に行く予定も無くなったからのんびりした時間を過ごしていた。

とはいうものの、心の中では、いつどうやって彼女に正式なプロポーズをしようかと考えを巡らせる。

昨日の流れからいって、あまり間をあけるのもどうかと思うし。
やっぱり、何かサプライズ的な演出があった方がいいだろうか・・。

「祐一郎、何か考え事? 難しい顔してる」

「あ・・うん。茉祐にいつ、どうやってプロポーズしようかと思ってさ」

「・・それ、私に言っちゃうんだ。ふふ、祐一郎らしい」

楽しそうに笑った後に、彼女は言った。

「そうだな・・、ふたりだけの時がいい。プロポーズの後にお店の人にも祝ってもらうとか、そういうのは恥ずかしいから」

「じゃあ、どうせなら茉祐に気に入ってほしいから・・・・婚約指輪のリクエストってある?」

「え、リクエスト?」

こくこくと、俺は首を縦に振った。
密かに用意して、感動的なシチュエーションでのプロポーズも喜ばれそうだけれど、俺は、彼女と俺の想いを形にして贈りたかったから、ふたりで選んだものをと考えていた。

「えっと・・ここの・・」

彼女がタブレット端末で見始めたジュエラーは、いわゆるトップブランドと呼ばれる海外の宝石商だ。

小児科のナースステーションで、別の科のドクターと結婚することになった看護師の婚約指輪の話題で、このブランドのことは知っていた。

リクエストがあるかと聞いた手前、いまさら引き下がれないけれど。
ここは高いぞ・・。

思わず、自分の貯蓄額がどれくらいだったかを頭の中で考えていた。



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