ホリー・ゴライトリーのような女




清原が眠りについて、僕は件のゾンビ映画の台本を手に、咥えタバコで河原に来た。


パラパラとめくってみるも、どうも内容が頭に入ってこない。根本的に苦手意識のある作品は、映画にしろ、音楽にしろ、頭に入ってこないもので、それを無理矢理入れようとしても、ダメだ。でも、それでも、頑張って入れてみる。セリフを頭の中で反芻する。だけにとどまらず、声にも出してみる。


「絶対に、守り切ってみせる」


「それは私のことかしら?」そう聞き馴染みのある声が聴こえて、振り返るとカーディガンを羽織った鹿波が立っていた。


「宣言してくれるのは嬉しいけれど、果たしてあなたなんかに、私が守れるかしら」


「やってみせるさ」と僕は台本を手に答えた。


「世界ってやつは今までも、僕とキミを寄せ付けないようにしていた。それは僕たちを結びつけないようにという、神様からの啓示なんだ。だから、今更こんな世界、どうってことない。僕たちの関係を切り裂くものは、すべて消し去ってみせるよ。相手がゾンビだって、火星人だって、なんだって、僕はキミを守ってみせる」


「ふふふっ、なかなか様になってるじゃない」と鹿波が僕の隣に腰を下ろした。


「久しぶりね。どう? 調子は」


「ぼちぼちってところさ。そういうキミの方こそどうなんだ?」


「まあ、ぼちぼちってところね。外部の現場にも呼ばれることが多くなって、あまり睡眠時間がとれないのがネックかしら」


「忙しそうだな」と僕は仰向けに寝転がった。東京の夜空は、どうも星の瞬きが弱い。


「もうすぐ夏休みだけど、撮影ばっかり?」


「そうね。でもそれは、あなたも同じでしょ?」


「ああ、そうだ」



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