過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜
ふたりでソファに腰掛けたまま、ゆったりとした時間が流れる。

雪乃はブランケットを膝にかけ、湯呑を両手で包み込むようにして持ち、ゆっくりとほうじ茶を口に運んだ。

香ばしい温かさが喉を通って、じんわりと体の奥に広がっていく。

ふと、神崎がさりげなく雪乃の手首に指を添えた。
「……また医者モードになってる」
雪乃が小さく笑ってそう言うと、神崎もふっと息を抜いたように微笑んだ。

「しばらくは医者モードのつもりだよ。まだ全快じゃないんだから」
指先で、一定のリズムを感じ取りながら、彼はやさしい声で続ける。

「神崎先生に見張られてたら、何もさせてくれなさそう」
雪乃が少し困ったように言うと、神崎はあっさりと頷いた。

「うん、何もさせないつもり」
その断言ぶりに、思わず雪乃は噴き出しそうになる。

「……息してるだけで偉いよ、雪乃は」

「先生、甘やかしすぎです」
「うん、知ってる」

笑い合いながらも、言葉の端々に本気が滲んでいて、雪乃の胸の奥が少しだけ熱くなった。
ただ座っているだけなのに、こんなにも満たされる時間があるのだと、思い知らされるようだった。
< 168 / 228 >

この作品をシェア

pagetop