過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜
神崎は、ベッドに横たわる雪乃の横にしゃがみ込むと、少しだけ表情を緩めて問いかけた。
「ご飯、食べれてる?」

雪乃は、ほんの少しだけ視線を動かして答える。
「今日の朝……パン、一個だけ。」

「そっか。」
神崎はうなずくと、無理に責めたりせず、静かに言葉を続けた。
「もう少し、頑張って食べようね。」

その声が、あまりにも普通で、あまりにもあたたかかった。
無理に入り込むでもなく、突き放すでもない。
ただ、今の自分をちゃんと見てくれているような声だった。

「それと、薬なんだけど。」
神崎はゆっくりと言葉を選びながら話す。

「市販薬で、雪乃さんの病気でも使える解熱剤。ここに届くようにしておくから。」

「でも、薬があるからって……無理しちゃだめだよ。」

その一言が、胸にしみた。
責められているわけじゃない。
憐れまれてもいない。

ただ、心から――心から、心配してくれているのがわかった。

どうしてそんなふうにしてくれるのか。
どこまでこの人は、優しさを持っているのだろう。
知らなかった。

誰かが、こんなにも穏やかに、自分を気遣ってくれるなんて。

ありがとう、と言いたいのに、うまく言葉が出ない。
代わりに、また静かに、深く息を吐いた。

それだけで、少しだけ、苦しさがやわらいだ気がした。
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