こちら元町診療所
confusion

『靖子さんおはようございますぅ。
 これ、わたしが持っていきますね?』

「あ‥うん‥よろしくお願いします。」


新しく医事課に社員が増えて2週間

人員不足だったこの場所が潤い幸せで
大満足な反面、桐谷さんの先生への
愛は増すばかりだった。


毎朝、新聞配達員として指名させられていた私としては、喜んで行ってもらえるとありがたいけれど、用事で診察室を訪れる度に先生から文句を言われる回数が増えている


『靖子に持ってきて欲しい』
『朝顔が見たい。』
などと相変わらずな所ならまだしも、
大した用事ではないのに内線が鳴る日も
多くなった。


桐谷さんも、師長さん達と同様、
朝のロッカールームでのおめかしを
負けずと頑張ってるもんね‥‥


ここ‥‥病院なんだけどな‥‥‥。


仕事は何とかこなしてくれているから
文句はないけれど、患者さん第一の
業務<叶先生になりつつある環境が
いいのか分からなくなっていた。


『中原君ちょっといいかね?』


午後の事務仕事をしていたら、
部長から声がかかり立ち上がった。


突然何?
いつもの申し訳なさげに呼ぶ感じとは
違うからちゃんとした用事だろうか?


先生のことで私を呼ぶ時は私と目を合わせないなら一目で判断できるからね。


「どうかしましたか?」

『うん、来週末開かれる医療事務研修
 に中原くんに行ってもらいたいん
 だがどうかな?』


医療事務研修?

渡された用紙を受け取ると、
視線を落として目を通していく。


段階別研修におけるマネージャークラス
の経験者が受ける講習に私が参加出来るの?


『中原君も後輩が増えて学ぶことや
 躓く事もこれから増えると思う。
 だからこの機会にどうかな?』


「はぁ‥‥行っても構いませんが、
 これ開催地が大阪で二日間ですよ?」


三連休の内の土日だから、月曜日は
一日体を休ませれるから問題ない。
レセプト期間だったら疲れ切って
しまうけど、この期間なら行けそうだ


『経費で落とせるから、ホテルや移動
 に使ったものは領収書を出して
 くれたらいい。』


「わかりました。せっかくなので、
 沢山学んで来たいと思います。」


軽く頭を下げると、振り返った先にいた人に思い切りぶつかり、鼻をさすった。


『靖子が行くの?ちょうど俺も仕事で
 大阪に用事があるから、一緒に
 行く?』


えっ!?
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