こちら元町診療所
話し方もいつもと違って少し乱暴で、
先生じゃない雰囲気にただただ驚く


『よっ!大志‥‥あ、叶先生って
 呼ばないとな。久しぶり、元気
 そうだな?』


『はぁ‥‥お前と話すことなんて
 ない。中原さん大丈夫だったか?』


「えっ?あ‥私は何も‥。むしろ
 すみません‥。驚いて大声を出して
 しまいました。」


写真で見るよりも更に優れた容姿を持つ
男性は、すぐに棗先生だと分かった。


短髪の黒髪はセットされ、切れ長の
一重の目は涼しげで、鼻筋と薄い
唇のバランスがいい為モデルのようだ


背は叶先生の方が少しだけ高いかな?
でも2人とも雑誌に掲載されてても
おかしくないくらいで、並ぶと破壊力が
凄すぎた


『驚かせてごめんね?可愛い子が
 居たからついね。』

「か、可愛いですか?ハハ‥‥
 ありがとうございます‥‥。」


ウィンクされた事に顔が歪みそうに
なりつつも、かなりの女慣れした行動に
困った。



『よろしく‥えっと‥中原靖子さん?』


差し出された手に握手するべきか迷った
けど、失礼かと思い手を差し伸べると、
叶先生に阻止され先生が棗先生の手を
握った。


『えー?大志から握ってくれるなんて‥
 よっぽど彼女と俺が触れ合うのが
 嫌なんだね。』


ドクン


切れ長の瞳が細められ、思わず視線を
あからさまに逸らしてしまった後
後悔する。


『はぁ‥そんなわけないだろ。
 お前みたいなのに中原さんは
 慣れてない。‥‥それより1人か?』


パシっと棗先生の手を叩き振り払うと、
棗先生は何が面白いのかニヤリと笑った


やっぱり仲がいいとは思えない‥‥。
憎しみ合ってるとも言えないけど、
少なくとも叶先生は目が笑っていないし
歓迎する雰囲気は出されてない。


『1人の訳ないだろ?‥‥蘭はずっと
 大志に会いたくて今日を楽しみに
 してたんだからな。』


えっ?



コツコツとヒールの響く音が聞こえ、
棗先生の背後からこちらへ向かって
歩いてくる女性が立ち止まると、
突然早足で駆け寄り、思い切り
叶先生に抱きついた。


『‥‥大志ッ‥‥会いたかった‥。』


まるでドラマのワンシーンのような
光景が目の前で繰り広げられ、
素敵な叶先生にお似合いの容姿端麗
な美女から目が離せない。


『‥‥‥久しぶりだな。また会えると
 思わなかったよ。』


ただの同僚とは思えなかったのは、
先生が女性の背中に片手を回し、
そこを軽く支えたのだ。
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