こちら元町診療所
あまりにも自然に振る舞う2人に
ただただ見ていることしか出来ないで
いたけど、ハッと我に返りなんとなく
見たくなくてそこから目を逸らした。


また私は‥勘違いをしていたのかも
しれないって思う事が怖くて‥‥。


先生が異性に対してこう言うことを
するのは自分だけなのだと思い上がって
いたんだと思う。


だからこそ、勘違いしてしまって
、1人で勝手にショックを受けてしまったのかもしれない。


『蘭、勤務中だから離れてくれ。』


『ふふ‥ごめんなさい。変わらず
 素敵なあなたを見つけて、いても
 たってもいられなくて‥。
 週に1度だけど、あなたのそばで
 働けて幸せよ‥‥。』


『それで?俺たちは何処に行けば
 いいの?』

「えっ?あ‥ッ‥‥す、すみません。
 医事課にご案内します。」


ぼーっとする私の目の前に、棗先生の
綺麗な顔が視界に入り、泣きそう
な気持ちをグッと堪えて笑顔を見せる


いけない‥仕事中なのに、
私情を優先に考えてしまうなんて
私らしくない‥‥。


『や、‥‥中原さん、奏真に何か
 されそうだったらすぐに俺に
 言うこと。蘭も事務の方々に
 迷惑かけないでくれ、いいね?』


ズキッ


いちいち反応して落ち込んで
しまうなんて子供じみて言いたくない


でも、好きな人が異性の名前を
呼ぶのって‥‥‥‥結構キツイや‥。


「平気ですよ。
 お二方とも先生のお知り合いの
 ようですし。ッ‥それじゃあ
 行きましょうか。」


叶先生の顔が真っ直ぐ見れない‥‥‥。


先生の事だから、私のちょっとした
変化にもしかしたら気付いてしまう
かもしれないけど、今はこれが私の
精一杯だ‥‥。


背中を向けて医事課に歩くと、
後ろで何か話していた会話にも
耳を塞ぎたくなる思いでいっぱいだった


「部長、棗先生と伊東先生が
 お見えになりました。」



処置室からも医事課を覗く
看護師チームに一気にザワつく院内の
こんな雰囲気は叶先生が来た日以来だ。


無理もない‥‥。

伊東先生も改めて見ると、小さな
顔に細くて長い手足、細いのに体の
凹凸はしっありあり、ふわふわの
ベージュの長い髪は外国人のようにさえ
思える。


叶先生とどんな関係なのかな‥‥‥。


ずっと会いたかったと言っていたし、
ただの友達ではない気がする。


これから頑張ると言ってた矢先、
私が1番頑張れるか不安だ。

今は新しい先生を受け入れ、みんなが
働きやすい環境を整える事を優先
させないとな‥‥‥。
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