それでも、あなたを愛してる。【終】



「─ん?翠さんだけでそうなら、契くんは?」

「え?」

「契くんと揃うと、やばいんじゃないの?」

「あ……うん。でも、それは殆ど、私関係というか、流石に契が全ての責任を負うからっていう言質をとった瞬間、熱々の紅茶を、私を下働きのように足蹴にした女性にぶっかけた時は、固まったよ」

「……」

……悠生は、どこから突っ込もうか悩んだ。

仮にも、氷見の令嬢だった依月を足蹴にしたのは、どこの命知らずだろうと思うと同時に、それが氷見家の依月への情の薄さの表れかと思ったり、熱々の紅茶?かけたのは、翠さん?

そして、契くんはそれを黙認?
この話し方からして、その一件以外にも色々とありそうで、悠生は問い詰めたくなったが、その全てを飲み込んだ。

「……良い婚約者と、友人じゃない」

「お兄ちゃん、今、なんて反応するか悩んだでしょ」

「……」

「良いんだよ。それが正常だから」

はあ、とため息をつきつつ、ゆっくりとその頃の記憶を思い出していってるのか、思い出し笑いをする依月。

「─そういえば、あの時も」

……ああ、やっぱり、あの日々は依月にとって辛いよりも、愛おしいが勝るのだろう。
それくらい、彼らは依月を愛してくれた。

その事実がとても嬉しい。
同時に、多くの人に愛される存在となっている彼女が、誇りだ。

父さんと母さんが願った、彼女となった。
素敵な女性になれるよう、沢山の人が愛を注いでくれていたよ。

嬉しいね、父さん母さん。
だから、安心してね。


< 122 / 186 >

この作品をシェア

pagetop