それでも、あなたを愛してる。【終】
「帰ってくるつもり、なかったの……」
「うん」
「あそこで死ぬことが出来てたら、私、何も知らないまま、消えることが出来たのに……」
向こうで、お兄ちゃんが記憶の再生を行う姿が見えた。四ノ宮当主と手を取って、この会場全員に映画のように見せるって話。
見たくないよ。そんな映像。
……また、見たくないよ。両親の最期なんて。
でもそうしなきゃ、あの人達は捕えられない。
止めようと喚き、暴れる人々を抑え込む警備隊。
それを指示する、千景や凛。
一声で黙らせる、四ノ宮家の当主様。
みんな、みんな大人になったのに、依月だけがあの日に取り残されたまま。
「ごめんなさい、ごめんね、契……」
この人はぜったい、依月を責めない。
依月に声を荒らげることもしない。
優しく微笑んで、撫でて、抱き締めてくれる。
どんな依月でも愛し抜いてくれて、
依月が何をしても許し、大切にしてくれる。
そんなあなただから、解放してあげたかったの。
─でもね、それ以上にね、私。
「……契」
「なに?」
「私を、許さないで……」
「……」
「あなたを裏切ろうとした、約束を破ろうとした、そんな私を─……」
依月の言葉に被せるように、契は言う。
「でも、お前は俺に伝えたいことがあるからって、自分自身で神力をコントロール出来るように、三年間も頑張ったんだろ?」
「……」
「聞かせて。教えて、依月。それが別れでもなんでも、お前の口から聞きたいよ」
優しい人。優しすぎる人。
別れを告げるつもりだったよ。
幸せになって、って、言いたかったよ。
それが正しいと思っていたし、今でも思ってる。
─思っているけど。それでも、それでもね。