それでも、あなたを愛してる。【終】



─涙は止まらない。震えも、何もかも。
映し出される過去の話。
あの日、ひとりで見たお兄ちゃんの記憶。

お兄ちゃんが抱え続けていたもの。


「─ん、おいで」


たった一歩が重くて、遠く感じた。
契は腕を広げて、依月を容易く受け止めると、強く強く抱き締めてくれた。


「おかえり」

「っ……」

「今も昔もずっと愛してるよ、依月」


─きっと、まだ考えることは沢山あって。
知らないことも沢山あって。
この先、そばにいられなくなるかもしれない。

でも、今だけは。どうか、今だけは。
囁くように愛をくれる貴方に。


「私も……」


喜びも、悲しみも、愛も教えてくれた貴方に、伝えておきたい。


「私も、あなたを愛しています」


─心からの想いを乗せて、彼へと気持ちを返せたのは、依月の記憶上、初めてのことだった。


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