それでも、あなたを愛してる。【終】
第八章☪ 過去と今と未来の
「……良かった」
悠生は立ち上がった四ノ宮家当主の手を取りながら、取り押さえられる人々を眺めていた。
その視界の端で、最愛の妹が信頼できる男の腕の中に収まる様子を見て、悠生は安堵する。
「どうして」
─もっとも、手を取った彼女は未だに現実を受け入れられていないようで、戸惑っているけど。
「悠生、よね……?夢じゃ、ないよね」
「う〜ん……だいぶ、姿は変わったと思うんだけど。わかるんだ?すごいね、彩蝶」
「……なんで?」
「神様が救ってくれたおかげ?まあ、それは今から見る記憶にあるから……」
悠生は、彩蝶を見ることが出来なかった。
あまりの美しい姿に、なんて言えばいいのかわからなくて、戸惑ってしまう。
「……私ね、貴方にずっと会いたかったの」
「!」
─その声は、震えていた。
繋いだ手からも震えが感じられて、彼女の方を見ると、彼女の瞳は涙の膜が張っていた。
それを破らないのは、涙を流さないのは、彼女の意地だろう。
「会いたかったのよ……」
強い彼女。そうならなくちゃいけなかった子。
悠生が消えて、彼女が取った行動を聞いた時、彼女の元へは戻れないなんて選択肢をした自分を責めたし、悲しかった。
素敵な君なら、他の人と幸せになれると思ったのに……そんなの、悠生のエゴでしか無かった。
だから、悠生は契に頑張って欲しかった。
依月を絡め取り、離さないで欲しかった。
自分が出来なかったことを、なんて、ちょっと押しつけがましかったかもしれないけど、ふたりには本当に幸せになって欲しいし……。
「っ!?」
「……あ、ごめん。可愛くて、つい」
身を屈めて、彼女を隠すように気を付けながら、軽くキスをすると、びっくりした顔をした彼女の涙の膜が破れる。