それでも、あなたを愛してる。【終】
「凛くん達には苦労をかけたけど、死の運命は覆せず、君達から母親を奪う結果となった。未来の凛くんの代償のためとはいえ、君達から父親すらも奪った。─調律者として、謝るよ。ごめんね」
悠生からの謝罪に、凛は首を横に振った。
「その采配があったから、今、翠は俺の隣で笑ってくれているのだということは理解しています。何度も繰り返し、何度も地獄を見た。だから、試行錯誤して頑張ってくれたことはわかります。ありがとう」
「こちらこそ。幸せになってね」
全ての生きとし生けるものの過去未来現在を見て、必要なもの、不必要なものを見分ける。
しかし、自分自身は歴史の改竄についていけず、ある日突然、“切り替わる”。
平然としているが、それはかなりの精神力が必要であり、目の前にこうしている今も尚、心臓では悪神とやらが動いている。
「依月が起こすはずだった、力による爆発事故も防ぐことも向こうに連れていくことで出来たし、可哀想な氷見の娘も救えた」
「そういや、突然現れて、契に寄っていたあの子、本当は契に全然興味なかったって」
「なかったよ。謝られた」
─そう。あのパーティーの後、彼女に謝られた。
必要以上に接触を図ったこと、依月に暴言を吐いたり、手を上げたりしたこと、契が知らなかった内部であったことも全て話した上で、彼女は笑っていた。
どんな罰でも、受けるから、と。
だから、契は何も課していない。
だって、被害を受けたのは依月だ。
依月が望まぬ限り、契にすることはない。
「唯一無二の、母親を人質に取られていたんだと。病に伏せているらしく……すぐに手配をして、今は入院しているよ」
「そうなの……。お姉ちゃん、氷見は?」
「氷見の当主をはじめに、兄弟、夫人、その子など、明らかに越権行為が認められたものに関しては、獄中だよ。あ、因みに、四ノ宮のね?夜霧が管理するって言って─……」
「毎日怒鳴ったり、泣き叫んでるぜ。いつまで持つかなー♪」
彩蝶の視線を受けて、にっこにこな夜霧。
「……任せる相手、間違えた?」
思わず、朝霧を見る彩蝶に、「なんでだよ」と抗議する夜霧。そして、目がいくのは、その空気の中、ずっとだんまりな柊絢人。