君の隣が、いちばん遠い
途中、一ノ瀬くんが屋台風のクレープ屋を見つけて、「一緒に食べよう」と言った。
「……チョコバナナでいい?」
「うん、ありがとう」
ふたりでクレープを半分ずつ持って、芝生の上のベンチに腰を下ろす。
風がほんの少し強くなってきて、髪がふわりと顔にかかる。
「……目に入ってない?」
「だいじょうぶ。ちょっと、くすぐったいだけ」
「……かわいいな」
一ノ瀬くんがぽつりとつぶやいた声は風に紛れていたけれど、わたしの心にはちゃんと届いていた。
頬が赤くなるのを自覚しながら、わたしはうつむいた。
言葉がなくても、沈黙が心地よかった。
この時間が終わらなければいいのにと、心のどこかで思っていた。
その次の日。
わたしは久しぶりのバイトに入っていた。
駅から少し歩いた場所にある、文具と雑貨の専門店。
手帳、ノート、ペン、便箋、ラッピング用品……きれいに並んだ小さな道具たちが、わたしの好きな空間だった。
「いらっしゃいませ」
レジでいつものように微笑んだ先に、見慣れた顔があった。