君の隣が、いちばん遠い
静かに繋がれた手が、じんわりと温かい。
でも、その沈黙の中で、ふと一ノ瀬くんが口を開いた。
「……あのさ、ずっと言おうと思ってたことがあるんだ」
「え?」
「塾に、ひよりを迎えに行ってもいいかな」
思いがけない言葉に、わたしは一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「……迎えに?」
「うん。別に毎日じゃなくていい。ひよりが迷惑じゃないなら、たまにでも。俺が行っても、いい?」
言葉の裏にある、微かな不安と、優しさと、そして――少しの嫉妬。
わたしは気づいてしまった。
「……白石くんのこと、気にしてた?」
「ちょっと、だけ。ひよりがあいつと帰ってるって聞いて、平気なふりしてたけど、あんまりよくなかった」
「……そう、だったんだ」
「ひよりの友達に口出しするつもりはない。でも……俺以外の男と二人きりでいるの、やっぱり、嫌だなって思った」
一ノ瀬くんが、まっすぐにそう言った。
不器用だけど、ちゃんとわたしの気持ちを尊重してくれる。