君の隣が、いちばん遠い


「修学旅行? 来月って、十月の十三日?」


振り向くと、白石くんがテキストを持ちながら立っていた。


「あ、うん。ちょうどその週がうちの学校の修学旅行で……」

「へぇ。どこ行くの?」


わたしは少し迷ってから答えた。


「京都と奈良、あと大阪もちょっとだけ。関西方面って言われてるよ」

「うちも似たような感じだな。けど、うちはたしか十月の終わりの週だった。二週間くらい違うか」


そう言って、白石くんはふっと笑う。


「偶然だな、タイミングだけずれたのか。でも、京都ってさ、混む時期だし大変そう」

「たしかに……。でも、楽しみ。班行動とかもあるし」

「班、決まってるの?」

「うん。わたしと、紗英ちゃんと、柊くんと……あとは一ノ瀬くん……の予定」

「なるほどね。まだ正式には決めていないけど、口約束はしてるってわけね」


白石くんはなにかを含んだような視線をこちらに向けてから、「そっか」とだけ言って笑った。

わたしはその笑顔に、少しだけ胸がざわついた。






< 215 / 393 >

この作品をシェア

pagetop