君の隣が、いちばん遠い
「修学旅行? 来月って、十月の十三日?」
振り向くと、白石くんがテキストを持ちながら立っていた。
「あ、うん。ちょうどその週がうちの学校の修学旅行で……」
「へぇ。どこ行くの?」
わたしは少し迷ってから答えた。
「京都と奈良、あと大阪もちょっとだけ。関西方面って言われてるよ」
「うちも似たような感じだな。けど、うちはたしか十月の終わりの週だった。二週間くらい違うか」
そう言って、白石くんはふっと笑う。
「偶然だな、タイミングだけずれたのか。でも、京都ってさ、混む時期だし大変そう」
「たしかに……。でも、楽しみ。班行動とかもあるし」
「班、決まってるの?」
「うん。わたしと、紗英ちゃんと、柊くんと……あとは一ノ瀬くん……の予定」
「なるほどね。まだ正式には決めていないけど、口約束はしてるってわけね」
白石くんはなにかを含んだような視線をこちらに向けてから、「そっか」とだけ言って笑った。
わたしはその笑顔に、少しだけ胸がざわついた。